炎症マーカーと腰痛の意外な関係とは?ー過去の研究知見からー

監修者青山朋樹 / 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 教授(医師、Ph.D)

ライター山下真司 / 理学療法士 / 修士号(医学)

炎症マーカーと腰痛の関連

(c) jarun011 - Fotolia.com

【記事のポイント】
1. リウマチなど、慢性的な疾患を患うと炎症マーカーが上昇することが知られている。
2. いくつかの炎症マーカーは、腰痛の有無や腰痛の重症度と関連があった。
3. 健康診断などで採血をする際、炎症マーカーも気にしてみよう!

風邪を引いた際や転んでケガをした際、自身の免疫力でそれを治そうとする働き(自己免疫)があります。

この自己免疫がしっかりと働いているか、もしくは過剰に働いているかを確認する手段として、血中にある「炎症マーカー」の濃度を測定する方法があります。例えば、急激な炎症の際にはC反応性タンパク(CRP)などの炎症性物質が、心筋梗塞などで心臓が壊死している際にはクレアチニンキナーゼ(CK)という物質の血中濃度が上昇します。特に、病院などの医療現場では、この炎症マーカーが治療を進めていくうえでも非常に重要になります。

一方で、「腰痛の時にお風呂に入っても大丈夫?オススメの入浴法も解説!」では、腰痛の中でもぎっくり腰や激しい運動時の打撲などで生じた腰痛は、炎症が強い可能性が高いことをお伝えしました。

では、腰痛と血中の炎症マーカーにはどのような関連があるのでしょうか?今回はこのような疑問調査した研究結果をご紹介いたします。

炎症マーカーと腰痛との関連を調べた10本の研究から

この調査では、過去の報告をもとに、現在分かっていることとまだ分かっていないことを系統的にまとめる手法を用いました(システマティックレビューという研究手法)。

まず初めに、医学文献のデータベースにアクセスすることで過去の報告を調べ、全部で1273本の報告が見つかりました。その中から今回の研究テーマに合ったものを厳選していき、その結果、最終的に10本の報告を用いることにしました。

この時、腰痛の定義は「非特異的(原因がはっきりしないもの)」としました。また、短期間で急激に痛みが生じた急性腰痛と、長い間痛み続けている慢性腰痛のどちらも含まれました。

そのうえで、腰痛の有無と、腰痛の重症度に分けて、炎症マーカーとの関連を調査しました。このとき、腰痛の重症度を調べる方法は問いませんでした。

CRPと腰痛との関係

CRPとは、全身の炎症反応に関与しているタンパク質の一種です。普段は血液内にごく微量しか見られませんが(< 0.3 mg/dl)、体内に炎症が生じたり、身体の組織の一部が損傷すると血中濃度が上昇します。このCRPは、病院などの臨床現場でもよく用いられる炎症マーカーの1つです。

このCRPと腰痛の有無との関連を報告した論文は2件みつかり、どちらとも「関連がある」という結果でした。また、腰痛の重症度との関連を報告した2本の論文からも「関連がある」という結果でした。

IL-6と腰痛との関連

IL-6は、炎症や身体の組織が損傷した際に、マクロファージ(貧食細胞)から分泌される「サイトカイン」と呼ばれるタンパク質の一種です。サイトカインとは、リンパ球から分泌される特殊なタンパク質の総称です。このIL-6は様々な役割を持つと言われていますが、その1つに、前述したCRPの分泌を促す役割があります。

今回の調査では、このIL-6と腰痛の有無との関連を報告した論文が合計で3本見つかりましたが、そのうちの2本は「関連がない」という結果でした。また、腰痛の重症度との関連を報告した1本の論文は「関連がある」という結果でした。

以上から、IL-6と腰痛との関連は「定かではない」というのが正しいでしょう。

TNF-αと腰痛との関連

TNF-αは、IL-6と同様、「サイトカイン」と呼ばれるタンパク質の一種です。TNFとは日本語で「細胞壊死(えし)因子」と呼ばれ、がんに対して出血性の壊死を生じさせる物質として発見されました。現在では、糖尿病や動脈硬化のリスクを高めることが分かっており、肥満だと増加しやすいことも明らかになっています。

今回の調査では、このTNF-αと腰痛の有無との関連を報告した論文が合計で5本あり、そのうち4本が「関連あり」という結果でした。しかしながら、腰痛の重症度との関連を報告した論文は「関連あり」という結果と、「関連がない」という結果がどちらも1本ずつあり、明確な関連は見られませんでした

最後に

今回の調査では、CRPや炎症性サイトカインと腰痛との関連を調べ、CRPやTNF-αと腰痛との関連はある程度示されました

しかしながら、今回の調査では痛みが原因で炎症が上昇するのか、もしくは炎症が原因で痛みが生じるのか、までは突き止めることができませんでした。したがって、腰痛と炎症マーカーとの因果関係までは証明できていませんので、今回の結果は慎重に解釈するのが望ましいでしょう。

では、もし腰痛が炎症反応によって引き起こされている場合、どのように対処していけば良いのでしょうか?

また、「慢性的な腰痛に痛み止めは効果的なのか!?」でご紹介したように、非ステロイド性抗炎症薬は、炎症を抑える効果がありますが、短期間の使用が望ましいとされています。

したがって、基本的に腰痛の対策として、クスリは最終手段と考えるのが良いでしょう。「最新の医学的根拠から推奨される「クスリに頼らない腰痛対策」とは!?」では、腰痛の対策として運動やヨガ、マインドフルネスなどが効果的である可能性が示されました。他にも太極拳や温熱療法、マッサージなど、様々な対策方法があります。ご自身に合った対策法を実践することが望ましいでしょう。

(山下 真司)


▼ 参考文献
タイトル:The association between pro-inflammatory biomarkers and nonspecific low back pain: a systematic review.
雑誌名:Spine J. 2018 Jun 28.
[PMID: 29960111]

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