腰痛があるから動けない|動くことへの恐怖心と身体活動の関係

腰痛における恐怖感と身体活動

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【記事のポイント】
1. 慢性の腰痛患者のうち、動くことに対する恐怖心が強い人は、身体の動きを制限しがちである。
2. 慢性の腰痛患者のうち、動くことに対する恐怖心が強い人は、動く前よりも後に不安が高くなる。
3. 恐怖心は自然な感情ととらえ、自分に合った動きを継続する行動ことが大切。

腰痛改善のためには身体を動かしたほうが良いことはわかっているけれど、どうも動く気になれない…。
そんな気分になることはありませんか?

もしかすると、そんな気分の背後には、動くことで腰痛が生じることに対する恐怖心があるかもしれません。
今回は、そんな恐怖心が身体の動きを制限する可能性を示した研究をご紹介します。

動くことに対する恐怖心と身体活動の関係

この研究では、慢性の腰痛を抱える患者33名(女性25名、男性8名:平均年齢42.4歳)に、動くことで腰痛が生じることに対し、どの程度の恐怖を感じているかを測定するTampa Scale for Kinesiophobia(TSK)という質問紙に回答してもらいました。

そして、すべての患者に、5.5kgの重さのカバンを、起立した状態でできるだけ長く利き手で持ってもらう実験を実施しました。

なお、この研究では、患者がカバンを持つ時間、カバンを持つ前後にかけての患者の心拍数、皮膚の汗の量から緊張の程度を測定する皮膚コンダクタンスレベル、不安の程度を測定する質問紙の得点などが測定されました。

動くことに対する恐怖心が強いと、動きを制限しがちになる

その結果、TSKという質問紙の得点が高い人ほど、カバンを持つ時間が短くなることが明らかとなりました。
この結果は、動くことに対する恐怖心が強い人は、日常生活でも、身体的な動作を控えがちである可能性が高いことを示しています。

一方、動くことへの恐怖心の強さと、心拍数や皮膚コンダクタンスレベルには関連は見られませんでした。
この結果は、この実験と同レベルの動作を行う場合においては、動くことへの恐怖心が強くても、動く際の心拍数や皮膚の発汗量などが増減する可能性は低いことを示しています。

動くことに対する恐怖心が強いと、動いた後も不安が続く

また、この研究では、動くことに対する恐怖心が強い人は、実験の前よりも後で、その状態に対する不安が高くなるということも示されました。

恐怖心を感じにくい動きからスタート

この研究から、動くことに対する恐怖心が強いと、身体の動きを制限しがちになる可能性が高くなることが示されました。

それでは、身体を動かす前に、まず恐怖心を取り除けば良いのでしょうか?
しかし、動くことに対する恐怖心は、痛みを抱える人、なかでも身体を動かそうとする人であれば誰もが抱く感情であり、ゼロにすることは非常に困難です。

ただし、動くことへの恐怖心は、「動いても痛みは悪化しない」という経験を何度も繰り返すことで、少しずつですが和らげることができます

そのため、身体を動かす際にはまず、恐怖心や不安を自然なものと認めるようにしてください。
そして、動くことを控えるのではなく、恐怖を感じにくい動き(たとえば、お尻に手をあて腰を数センチだけ後ろに反らすなど。詳しくは「3秒でできる腰痛対策!「これだけ体操」の効果とは!?」をご覧ください。)から少しずつ取り組み、徐々に動きのレベルを上げるようにしましょう。

(坂野朝子)


▼  参考文献
タイトル:Fear of movement/(re) injury in chronic low back pain and its relation to behavioral performance.
雑誌名:Pain. 1995 Sep;62(3):363-72.
[PMID: 8657437]

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