“腰を曲げて物を持ち上げると腰痛になる”は本当か ー最新の科学的検証結果よりー

監修者青山朋樹 / 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 教授(医師、Ph.D)

ライター小武 悠 / 理学療法士

持ち上げ動作

(c) WavebreakMediaMicro - Adobe Stock

【記事のポイント】
1. 「物を持ち上げる時に腰を曲げないようにしましょう」というアドバイスは、腰痛予防のためによく聞く言葉である。
2. しかし、現状では腰を曲げると腰痛になるリスクが高くなるという明らかな科学的根拠はない。
3. 「腰を曲げてはいけない」と警戒しすぎることは、かえって腰に良くない可能性がある。

「床から物を持ち上げる時は、腰を曲げないようにしましょう!でないと腰痛になりますよ。」

このアドバイスは、腰痛を経験したことのある方なら、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

これに対して、2019年の年末に、「物を持ち上げる時に腰が曲がっていたら、本当に腰痛になるリスクが高くなるのか?」について調査した論文が発表されました。この論文の結果を踏まえて、持ち上げ動作中の腰の曲がり具合と腰痛の関係について、現段階の科学的知見をご紹介していきます。

”持ち上げ動作”と”腰痛”に関する12本の論文をまとめて検証

今回の研究では、過去に行われた12本の論文から得られた研究結果をさらにまとめて、より包括的に調査するメタ・アナリシスという方法が用いられました。

この12本の論文を選び出す上で、研究方法などによる研究結果のかたより(バイアス)をできるだけ少なくするために、2人の研究者が、それぞれの論文が、複数の条件を満たしているかについてチェックを行いました。

現状、”持ち上げ動作中に、腰を曲げると腰痛になる”という根拠はない

調査の結果、これまでに「物を持ち上げる時に腰を曲げる角度が大きいと、将来的に腰痛になりやすい」ということを示した過去の研究がないことが明らかになりました。

また、腰痛があった人となかった人で、物を持ち上げる時の姿勢を比べてみたところ、ほとんどの研究で、腰痛がある人もない人も、腰を曲げる角度には大きな差がないことがわかりました。

このことをふまえると、「物を持ち上げる時に腰を曲げないようにしましょう」というアドバイスは、腰痛予防のためによく使われるフレーズではありますが、はっきりとした科学的な裏付けがあるわけでなく、治療家や指導者の経験上の知恵から出てきている言葉なのかもしれません。

「腰を曲げてはいけない」と警戒しすぎることは、かえって腰に良くない可能性がある

今回、ご紹介した研究から、「床から物を持ち上げる時は、腰を曲げてはいけない」というアドバイスが、はっきりとした医学的根拠があるものではないことがわかりました。

また、近年の研究では、持ち上げ動作などの「動きに対する恐怖感」が、「腰の機能低下」と関連している可能性があることがわかっています(参考:腰痛への恐怖感と腰の動きの関係)。

このことから、物を持ち上げる動作に対して「絶対に腰を曲げてはいけない」と過度に警戒しすぎることは、腰の動きを悪くさせ、かえって腰痛を慢性化・悪化させてしまう可能性があります。

この研究を解釈する時の注意点

今回、紹介した研究では、注意すべき点があります。

それは、今回の研究に含めた12本の論文のうち、「12kg以上の物を持ち上げるとき」について調査したものが1つもなかったことです。そのため、今回の研究結果が、あくまでも「12kg未満の物を持ち上げるとき」のみの結果を反映しており、12kg以上の物の持ち上げ動作と腰痛との関連は別問題であることに注意が必要です。

腰痛と職業に関連はあるか」でご紹介しているように、重たいものの持ち上げを伴う重労働に携わる人は、腰痛のリスクが高くなることがわかっており、12kgを超えるような重量物の持ち上げになると、結果が変わってくる可能性もあります。

仕事などで、日常的に重たいものを持ち上げる方向けに、「運搬作業をする方必見!太もも裏のストレッチをして腰痛を予防しよう!」では、具体的なストレッチの方法もご紹介していますので、ぜひこちらもご参照ください。

また、今回の研究結果は、医学的根拠のレベルが高いわけではなく、持ち上げ動作と腰痛のはっきりとした関係を明らかにするには、今後のさらなる質の高い研究が必要です。

(小武悠)


▼ 参考文献①
タイトル:To Flex or Not to Flex? Is There a Relationship Between Lumbar Spine Flexion During Lifting and Low Back Pain? A Systematic Review With Meta-Analysis.
雑誌名:J Orthop Sports Phys Ther. 2019 Nov 28:1-50.
[PMID: 31775556]

  • *当記事は、健康に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の医学的見解・治療法を支持・推奨するものではございませんので、ご了承ください。
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