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【記事のポイント】
1. 腰痛に関するパンフレットの配布のみで腰痛に改善が見られた。
2. 腰痛に関するパンフレットの配布のみで経済的コストが抑制された。
3. 重症化する前の段階で、腰痛の正しい知識と対策の方法を知ろう!
腰痛には軽いものから重いものまで存在します。できることなら腰痛が重症化してしまう前の段階から腰痛を改善したいものです。
また人の心理として、お金をかけずに楽して改善したいものです。今回ご紹介する研究では、軽い段階の腰痛に対しては、パンフレットにより知識を得ることが、費用対効果の高い対策である可能性が報告されました。
パンフレットによる効果を検討
今回の研究では、フィンランドの2480人の明らかに原因がない腰痛持ちを対象にしました。
痛みの程度としては軽度(長さ100mmの直線を用いて、左端が「痛みなし」、右端が「想像できる最高の痛み」とした際に、10〜34mmを指し示した場合を軽度と定義)の非特異的腰痛を有していた312人に参加を呼びかけ、そのうち、最終的に264人が参加しました。参加者は以下の3つのグループに振り分けられました。
■ パンフレットのみを配布:92人
■ パンフレットを配布し、産業保健師(労働者の健康増進に従事する保健師)によるアドバイスを加えたグループ:89人
■ 何の対策も行わないグループ:83人
なお、パンフレットの内容は、腰痛に対する正しい考え方、科学的根拠に基づく腰痛の対策、ガイドラインに基づく重要なメッセージ、重症化を避ける方法、できるだけ早く普段通りの生活や仕事を再開することなどが記載されました。
これらの3グループによって、腰の痛みやそれによる日常生活の制限、医療費、休職日数に変化が見られるかが、2年間にわたって検討されました。
パンフレットの配布のみで医療費抑制の効果あり!
研究の結果、パンフレットを配布したのみのグループにおいて、医療費および休職日数が減少することが明らかとなりました。
パンフレットを配布し、産業保健師によるアドバイスを加えたグループにおいては、医療費は減少していましたが、休職日数にわずかな改善のみ認められました。しかほとんど変化は見られませんでした。
今回の報告でパンフレットののみのグループの方が、アドバイスありの場合よりも効果が大きくなった要因として、以下のように研究を実施した筆者は考察しています。
■ パンフレットのみを配布したグループの方が注意深くパンフレットに目を通していた可能性
■ 口頭によるアドバイスは情報伝達の一貫性を保つことが困難であると言われており、それが関係した可能性
パンフレット配布により腰痛による日常生活の制限に改善が認められた
産業保健師によるアドバイスの有無に関わらず、パンフレットの配布によって腰痛による日常生活の制限に改善が認められました。
初期の段階で正しい知識の獲得と対策を!
今回の結果から、腰痛が重症化していない段階であれば、パンフレットを配布するだけで、費用対効果が高い腰痛対策を行える可能性が明らかとなりました。特別な治療を受けて、治してもらうというよりは、早い段階からパンフレットなどから正しい知識を得て、正しい対策をすることが重要かもしれません。
しかし近年インターネット、SNSの普及に伴い、情報が洪水のように溢れ返っており、どの情報を信じるべきかというのが分からないという方もいると思います。その際には、信頼できる情報かどうか判断するために、過去に紹介した『健康情報の信頼性を確かめるための3つの基準』もぜひ参考にしてみてください。
(坪井大和)
▼ 参考文献
タイトル:Cost-effectiveness of providing patients with information on managing mild low-back symptoms in an occupational health setting.
雑誌名:BMC Public Health. 2016 Apr 12;16:316.
[PMID: 27068751]
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