産後女性が悩む骨盤周りや腰の痛みの原因と対策を専門家が徹底解説!

産後女性の骨盤周りと腰痛の痛み

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【記事のポイント】
1. 産後に骨盤周りや腰が痛くなる原因は!?
2. 産後の骨盤周りや腰の痛みはいつまで続くのか!?
3. 産後の骨盤周りや腰の痛みの対策

産後、多くの女性が骨盤周りや腰の痛みに悩まされています。
多くの働く女性を悩ます”産後の腰痛・骨盤帯痛”に影響する要因とは?」では、産後12週の時点での骨盤周りや腰の痛みを経験する女性の割合は、約50%にも及んだとされています。

育児を頑張る結果、ついつい母親自身の健康が後回しになってしまいがちですが、育児のためにも、まずは自身の健康について考えてみましょう。

産後に骨盤周りや腰が痛くなる原因は!?

産後女性が痛みを感じる部位としては、腰部、仙骨、恥骨などあります。

では、なぜこれらの場所に痛みを感じるのか、原因は以下の通りです。


■ 産後しばらくは骨盤が緩んだままである
■ お腹や骨盤周りの筋肉(インナーマッスル)が働きにくくなったままである
■ 育児により、今までよりも腰への負担が大きい生活になっている

これらの要因により、産後の女性は骨盤周りや腰に痛みを感じやすくなっています。それぞれについて解説していきます。

産後しばらくは骨盤がゆるんだままである

妊娠すると、関節や靭帯をゆるめる作用のあるリラキシンというホルモンが分泌されるようになります。リラキシンの作用により、分娩時に赤ちゃんが産道をスムーズに通り抜けられるようになります。リラキシンは妊娠40週目くらいでピークに達し、産後しばらくはこのホルモンの影響により骨盤の関節や靭帯が柔らかくなっています。

骨盤はいくつかの骨(仙骨、腸骨、恥骨、坐骨)で構成されています。左右の骨盤をつなぐ恥骨結合という部分があり、これがリラキシンによりゆるむことで骨盤のカラダを支える力が弱まり、結果として恥骨痛や腰痛を感じるようになってしまう恐れもあります。

また、骨盤の関節や靭帯が柔らかくなることで、これを固定するために骨盤周囲の筋肉は今までよりも働かなくてはなりません。それにより、今までよりも筋肉の疲労が蓄積しやすくなり、痛みを感じるようになってしまうこともあります。

お腹や骨盤の筋肉が働きにくくなったままである

妊娠中の女性はお腹が大きくなります。お腹が大きくなることで、腹筋が引き伸ばされ、そのままの状態でしばらくのあいだはいることになります。

本来、筋肉には働きやすい長さがあり、筋肉が伸びきった状態や縮こまった状態ではうまく力を発揮できません。お腹の大きさは妊娠前の状態まで戻りますが、長期間お腹が大きかった影響で、産後は腹筋が伸びきった状態となってしまい、うまく縮めなくなってしまいます。

また、お産のときに骨盤底筋という骨盤の底に付く筋肉も引き伸ばされるため、この筋肉も縮みにくくなってしまい、機能が低下してしまいます。

腹筋や骨盤底筋の機能が低下することで、腰の筋肉への負担は増大し、腰痛になりやすくなってしまいます。

育児により、今までよりも腰への負担が大きい生活になっている

赤ちゃんが産まれたことで、抱っこをする機会が増えます。今までの日常生活に加えて、赤ちゃんを抱っこする機会が増えたことで腰への負担は大きくなります。また、赤ちゃんは成長とともに体重も少しずつ大きくなっていくので、それに伴って腰への負担も少しずつ大きくなることになります。

赤ちゃんをベッドから抱っこするときや、抱っこひもをしての移動や家事の最中など腰に負担を強いる動作は日常の中にたくさんあります。腰を痛めないようにするためにも、知識と注意が必要です。

以上のように、産後はこれら3つの原因が組み合わさることで、骨盤周囲や腰への負担は大きくなり、痛みが生じるリスクが高くなってしまいます。

痛みの原因となる可能性のあるものが多いため、骨盤周りや腰の痛みの原因は特定しにくいのも特徴的です。何が原因で痛みを感じているのかがわからないことがストレスに変わり、ストレスにより痛みが助長されてしまう恐れもあります。

まずは、様々な要因で痛みが出るということを理解しておきましょう。

産後「持続する」骨盤周りや腰の痛み

産後の骨盤周りや腰の痛みはいつまで続くのでしょうか?

産後の腰痛・骨盤帯痛に悩む女性の80%が再発・持続していた!」では、産後の腰痛・骨盤帯痛に悩む女性の65.3%の女性で痛みが再発、15.3%の女性で痛みが持続したことが認められたとし、産後の腰痛・骨盤帯痛の再発・持続の確率は約80%であるとされています。

前項でもお伝えしましたが、産後しばらくはリラキシンの影響により骨盤が不安定になっています。
リラキシンは産後2〜3日で分泌が止まるとされています。つまり、それ以降は骨盤が安定してくるので、骨盤のゆるみによる骨盤周囲や腰の痛みは徐々に軽減されてくることになります。
これよりわかるのは、妊娠中や産後の骨盤がゆるんでいるうちに、骨盤周囲や腰の筋肉や靭帯などの組織に負担をかけたことで痛みを感じ続けている可能性があるということです。

また、「産後に腰痛や骨盤周りの痛みが治りにくい人のカラダの特徴とは?」では、産後の骨盤周りや腰の痛みが改善しにくい要因として、お尻の筋力と腹筋の持久力の低下が関与していることが明らかになったとされています。

産後の痛みが長引けば、原因の特定が難しくなり、痛みを慢性化させてしまう恐れがあります。そうなれば、気持ちも沈むでしょう。

産後の痛みを長引かせないためにも、まず自分の骨盤周りや腰の痛みが何を原因として生じているのかをしっかりと把握する必要があり、それに合わせた対策をとることが重要です。

原因を特定して自身の状態に合わせた対策を講じるためにも、まずは専門家に相談することがおすすめされます。

産後の骨盤周りや腰の痛みの対策

ここでは、今まで解説してきた産後の痛みに対してどのような対策が有効かを、以下の5点より述べていきます。


■ 筋肉について
■ 寝るときの姿勢について
■ 日常生活の過ごし方について
■ 骨盤ベルトの使用について
■ 旦那様や家族の協力について

原因が様々であったように、痛みに対する対策も様々です。

痛み対策|筋肉について

産後の痛みを軽減し、慢性化させないためにストレッチはおすすめです。

妊娠中や産後は、普段よりも筋肉などに負担をかけてしまっていることで痛みを生じやすくなっていることはおわかりいただけたかと思います。ストレッチにより筋肉の疲労をケアすることで、痛みを出さないカラダを維持することが大切です。

特に脚の付け根や太ももの筋肉は柔らかく保つことが望まれます。これらの筋肉が硬いと骨盤にかかる張力が大きくなるため、骨盤周りや腰の筋肉への負担を増やすことになります。

ストレッチは筋肉が伸びているのを感じながら、最低でも20秒以上ゆっくりと反動をつけずに伸ばすようにしましょう。

脚の付け根の筋肉のストレッチ

ここでは右脚の付け根の前側にある腸腰筋という筋肉のストレッチの仕方を説明していきます。

右膝を地面につき、片膝立ちの姿勢になります。左膝に両手を添え、そのままゆっくりと体重を前にかけていきます。

体重を前にかけていくときの注意点は、腰を反らないようにすることです。
腰痛を予防したり和らげるためにするストレッチであるのに、腰を反ってしまうとかえって腰に負担をかけてしまいます。

前にかけていくにつれて、右足の付け根から太ももの前にかけて突っ張れば正解となります。

その状態を30秒~1分間保持しましょう。

左脚の腸腰筋を伸ばしたい場合は、説明とは逆の方法で実施してください。

太ももの裏の筋肉のストレッチ

太ももの裏の筋肉であるハムストリングスを伸ばすストレッチをご紹介します。ハムストリングスは骨盤から膝の裏にかけて付いている筋肉です。

この筋肉が硬くなることで、骨盤の動きが制限されていまい、腰の負担が大きくなった結果、それが腰痛になるリスクを高めてしまいます。

ここでは床に座った状態で行うストレッチの動画をご紹介します。中級の動画を紹介していますので、難しい方は初級、簡単と思う方は上級をご覧下さい。

もう一つ別の椅子に座って行う方法もご紹介します。椅子に座り、自分の眼の前にもう一つ椅子を置きます。伸ばしたい方の脚を椅子にのせ、のせた脚のつま先に向かって手を伸ばすと太ももの裏や膝の裏が伸びると思われます。

簡単にできるお尻の筋肉と腹筋のトレーニング

また、「産後に腰痛や骨盤周りの痛みが治りにくい人のカラダの特徴とは?」では、産後の腰痛・骨盤帯痛が改善しにくい要因として、お尻の筋力と腹筋の持久力の低下が関与していることが明らかになったとしています。

つまり、お尻の筋肉と腹筋の持久力を向上させることで、産後の腰痛・骨盤帯痛の改善が望める可能性があるということです。

仰向けで寝ます。両膝をしっかりと曲げ、膝と膝のあいだにバスタオルを丸めたものやボールを挟みます(以下の動画では、タオルやボールを挟んでいません)。この状態でゆっくりと息を吐きながらお尻を少し浮かします。息を吐く時間の目安は15秒から、30秒以上まで伸ばせるとよいでしょう。

膝と膝のあいだにバスタオルを挟むのは、安定させる目的と、内ももの筋肉を働かせることでお腹にも力が入るためです。これにより、お尻の筋肉と腹筋を同時に使う練習ができます。

1セットあたり10回を目安に、1日に2セットを目標にしましょう。

痛み対策|寝るときの姿勢について

寝るときは、基本的に楽な姿勢で寝るのが望ましいのですが、仰向けで寝るときは注意が必要です。なぜなら、妊娠中はお腹が大きくなるため、お腹の重さで骨盤が前に倒れたような姿勢、反り腰になる場合が多いです。この状態が長期間続くことで、反り腰が癖になっている場合があります。その状態で仰向けで寝ると、腰が少し浮いたような状態になり、マットレスとのあいだに隙間ができてしまうことがあります。このまま寝てしまうと腰の筋肉の疲れが落ちにくくなってしまい、朝方に腰が重だるくてカラダが動かしにくいということになってしまいます。

仰向けで寝るときは、座布団のようなクッションを太ももの下に敷き、脚の付け根が少し曲がるようにして寝ましょう。そうすることで、腰の反りを軽減できるため、寝ているあいだにしっかりと腰の筋肉の疲れをとることができます(「腰の痛みで仰向けで寝られない!改善するための2つのポイント!」でも詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。)。

また、後述する「痛み対策|筋肉について」の中で解説している脚の付け根の筋肉(腸腰筋)のストレッチがおすすめです。

痛み対策|日常生活の過ごし方について

産後の腰痛・骨盤周りの痛みに悪影響する”カタストロファイジング”とは?」では、妊娠中、産後にカタストロファイジングという状態に陥ることで、産後の骨盤周りや腰の痛みを発症する割合が増加することが考えられるとし、カタストロファイジングの状態に陥っていた回数が多いほど、産後の日常生活の制限の程度も増加することが明らかとなったと報告しています。

『カタストロファンジング』とは聞きなれない言葉ですが、日本語で『痛みの破局的思考』と訳され、痛みのことをあれこれと考えたり、必要以上に恐怖心を抱き、痛みに対して無力であると感じてしまう状態をさします。

特に妊娠中は無事出産できるかと不安に思ったり、カラダの急激な変化により腰痛になってしまったりと、精神的にも身体的にも苦痛を感じやすい状態にあることから、このカタストロファイジングの状態に陥りやすいといえます。

カタストロファンジングに陥らないためにも、多少痛みがあっても、日常生活では動ける範囲で少しずつ動くことが重要となります。

動かないことで痛みに意識が向きやすくなる場合もあるので、安静にせずに、軽い有酸素運動やマインドフルネスを行うことで、痛みへの過剰な意識を取り除き、痛みに支配されない生活を取り戻すことができるようになります(詳しくは「軽い息切れ程度のエクササイズが”慢性腰痛”に効果的」や「マインドフルネスの腰痛に対する効果ー最新の知見からー」をご覧下さい)。

痛み対策|骨盤ベルトの使用について

徐々に今までの生活に戻していくための一助として、骨盤ベルトがおすすめです。

一般的に産後6ヶ月までは骨盤ベルトを使用した方がいいと言われています。しかしながら、長期間使うことで、骨盤を覆う筋肉を使わなくなり、それによって筋肉の機能が回復しにくくなるため、それに頼りすぎることはおすすめできません

しかし、赤ちゃんの抱っこや授乳など、腰に負担のかかる姿勢で長時間いる際にはベルトを装着することで、腰への負担を軽減することが望まれます。

痛み対策|旦那様や家族の協力について

無事に出産を終えて自宅に戻り、今までと同じ生活と育児をいきなり両立してしまうと、弱ったカラダでは耐えきれずに痛みを出してしまいます。

そこで重要となるのが旦那様や両親など、家族の助けです。周囲に理解を求め、助けてもらえるところは、遠慮せずに手伝ってもらい、徐々に今までの生活に戻していくことが理想的です。

まとめ

産後の骨盤周りや腰の痛みは原因の特定が難しく、慢性化する恐れがあるため、早期から予防も兼ねて対策を実施することがおすすめされます。

育児を辛いものにせず、笑顔で取り組めるようにするためにも、産後の骨盤周りや腰に現れる痛みについて理解し、ここまででお伝えした内容を実践しながら痛みをコントロールできるようになりましょう。

(諸麥 友博)

  • *当記事は、健康に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の医学的見解・治療法を支持・推奨するものではございませんので、ご了承ください。
  • *本サービスにおける医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではございません。そのため、本サービス上の情報や利用に関して発生したいかなる損害についても、弊社は一切の責任を負いかねますことをご了承ください。なお、診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関にて受診いただきますことをおすすめいたします。

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