痛みはいつ頃よくなる?五十肩の症状と経過について徹底解説!

監修者青山朋樹 / 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 教授(医師、Ph.D)

ライター梶原 文規 / 理学療法士/ 修士号(保健医療学)/ 呼吸療法認定士/ 健康予防管理専門士

(c)  Asier - Adobe Stock

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【記事のポイント】
1. 五十肩の症状は、凍結期、拘縮期、回復期という経過をたどり、一般的に回復までに1〜4年かかる。
2. 五十肩になりやすい人の特徴には、座る時間が長いことや糖尿病であることなどがあげられる。
3. 痛みの対策には、胸・背中のストレッチや、寝る時の工夫を取り入れることがおすすめ。

今回は、「肩が痛くて、夜眠れない」「肩が動かしにくい」とお悩みの方に向けて、五十肩の具体的な症状とその経過、さらに一般的に行われている治療までご紹介していきます。

肩の痛みや動かしにくさなどでお困りの方はぜひご覧ください。

五十肩の原因は実ははっきりとわかってない

痛みが強い時には、夜も眠れないくらい辛いこともある五十肩。「五十肩」という言葉は、テレビや雑誌など目にすることは多いですが、その痛みを引き起こしている病態は様々であり、はっきりとした原因はわかっていません。
そのため、現在は、五十歳前後に起こる、原因がよく分からない肩周辺の痛みや動かしにくさを主な症状とする状態を総称して「五十肩」と呼んでいます。医学的には、五十肩のことを「肩関節周囲炎」と呼ぶことがあります。
英語圏では肩周辺の痛みや動かしにくさを「frozen shoulder(凍結肩)」「adhesive capsulitis(癒着性関節包炎)」 「scapulohumeral periarthritis(肩関節周囲炎)」と呼ばれており、「五十肩」の直接的な英語はありません(参考文献①)。

ある調査によると、40~59 歳の人が、肩関節周囲炎で悩む人口の84.4%を占めると報告されています(参考文献②)。やはり、五十肩と呼ばれるように五十歳前後に多いようです。

五十肩の代表的な症状

五十肩の代表的な症状は、以下のものです。


■肩周辺の痛みがある(就寝時に強くなることがある)
■肩の関節の動きが制限される

上記の症状以外では、なかなかご自身では自覚しにくいかもしれませんが、「肩周辺の皮膚の温度の低下がみられた」という報告もあります(参考文献③)。

また、肩の痛みと合わせて、手や腕のしびれを感じる人もいますが、この場合は、五十肩以外の要因も考えられます。詳しくは、以下の2つの記事でご紹介しているので、しびれがある方はこちらをご参照ください。
参考記事:
肩こりと手のしびれがある場合は、病院に行くべき?
胸郭出口症候群とは? 原因から自分でできるストレッチまで理学療法士が徹底解説!

どのくらいでよくなる?五十肩の一般的な経過

五十肩の一般的な経過は、下記の表の通りで、大きく分けると3つの期間に分かれます(参考文献②、④)。

(c) BackTech Inc.

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特に痛みが強い初期の時期では、寝れないほど痛みを感じるというケースもあります。また、症状が改善してくるまでの期間は、一般的に1〜4年程度といわれていますが、個人差がありますので、参考程度にとどめておいてください。

五十肩になりやすい人のリスク要因

五十肩のリスク要因には、下記の2つがあることが分かっています。


① 座って仕事をしている時間が長い
② 糖尿病を患っている

 

① 座って仕事をしている時間が長い

座って仕事をしている人は五十肩になりやすいと言われています(参考文献⑤)。これは座って仕事をすると巻き肩(肩が内側に入り背中が丸くなる姿勢)になりやすく、肩周りの筋肉に持続的に力が入った状態になることが影響していると考えられます。

② 糖尿病を罹患している

糖尿病の人は、肩の関節周囲に炎症を生じやすくなることによって五十肩になりやすいと言われており、特にインスリンを使用している人はそのリスクが高いと言われています(参考文献⑥)。糖尿病は肩関節だけでなく、様々な疾患(脳梗塞、心筋梗塞、腎不全など)のリスクも高くなるので糖尿病の方はその治療を優先的に行いましょう。
また、いまだ明確な因果関係は明らかではないものの、近年の研究では、血中の脂質の値が高い場合や、甲状腺疾患を患っている場合には、五十肩に悩まされている人が多いことが分かってきています(参考文献⑦〜⑨)。

五十肩のリスクを高める要因を減らすには

上記で述べたように、五十肩になりやすい要因の一つに糖尿病がありますが、これは、肩だけではなく、腰や首などの長引く痛みにも関連があるといわれています(参考記事:首や腰の痛みは糖尿病と隣り合わせ??)。

糖尿病の改善には、定期的な運動が重要であることがわかっています。また、運動は糖尿病のリスクを減らすだけでなく、肩こりや腰痛などの長引く痛みを軽減する効果が期待できることもわかっています(参考記事:慢性的な痛みの改善に適切な運動量はあるのか?)。

「エスカレーターではなく階段を使う」「一駅前で降りて、ウォーキングする」など、ご自身の生活に取り入れやすい運動から始めるとよいでしょう。

五十肩のセルフケアと痛みが強い時の眠り方の工夫

続いて、五十肩のセルフケアと痛みが強い時の眠り方の工夫についてご紹介していきます(参考文献⑩)。

すき間時間でセルフケア!おすすめストレッチ

五十肩のセルフケアとしては、一般的にストレッチが病院などで指導されることがあります。ストレッチは、肩や肩甲骨の周りを動かすようなストレッチがおすすめです。

ここでは2つおすすめなストレッチをご紹介したいと思います。

壁に手をついて胸を伸ばすストレッチ

五十肩の人は、胸の前の筋肉が硬くなっている場合が多く、胸の前の筋肉の柔軟性を高めることで症状の軽減が期待できます。特に、座って仕事をすることが多い場合には、巻き肩気味になり胸の前が固まりやすくなってしまうため、無理のない範囲でこのストレッチを行ってみましょう。

<方法1>
壁に手をついたまま、身体を反対側に捻じり、30秒保持する

(c) BackTech Inc.

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<ポイント>
①壁から手が離れないようにする
②呼吸を止めない
③痛みが強い場合は無理しない(耐えられる範囲の痛みであれば、運動中に痛みが出ても基本的には大丈夫です)

<方法2>
壁についた手を徐々に上に挙げていき、30秒間保持する

(c) BackTech Inc.

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<ポイント>
■リラックスできる手の高さで保持すること
■呼吸を止めない

背中を伸ばすストレッチ

痛みがある状態が長く続くと、次第に腕を動かす機会が減っていき、胸の前だけではなく、脇や背中周りの筋肉も硬くなってきます。脇や背中、二の腕あたりに伸びを感じながらストレッチしてみましょう。

<方法>
両手を前に伸ばしながら背中を丸めて30秒保持する

(c) BackTech Inc.

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<ポイント>
■肘を伸ばしてみぞおちを後方に動かすイメージで行う
■呼吸を止めない

痛みが強い時の眠り方の工夫

代表的な症状で紹介したように、五十肩は「夜間の痛み」を伴うことがあります。時としては、この痛みによって眠れないこともあります。そうなると、肩が痛いだけではなく、朝から気分が憂うつですよね。そこで、少しでも痛みの負担を減らして、ラクに眠れるようにバスタオルとまくらを使った方法をご紹介します。

仰向けで眠る時

五十肩の場合、仰向けで寝た際に、肩の位置が背中側に引っ張られることで痛みを感じる場合が多いです。そのため、仰向けで眠る時は、バスタオルを肩の外側に挟むことで肩とベッドの隙間を埋めて、肩の位置を自身の一番ラクなところに調整してみましょう。

(c) BackTech Inc.

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(イラストは、左肩が痛い場合を想定しています)

<ポイント>
■ なるべく大きめのバスタオルを使って、肩だけではなく腕の外側も支える

横向きで眠る時

横向きで寝ると、仰向けの時とは反対に、肩の位置が腕の重さに引っ張られて、お腹側に移動します。この時に、痛みを感じる場合は、まくら(毛布を丸めたものでもOK)を抱きかかえるえるようにして、肩のラクな位置をキープできるように工夫してみましょう。

(c) BackTech Inc.

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(イラストは、左肩が痛い場合を想定しています)

<ポイント>
■ まくらが小さい場合は、毛布やバスタオルで太めにする

五十肩の代表的な治療方法

続いて、最新の研究で医学的な根拠が明らかになっている治療について紹介していきます。

五十肩に関する正しい知識を得ること

五十肩の代表的な治療として、”患者教育”が挙げられます。患者教育とは、痛みに対する原因や経過を説明することで、患者自身が五十肩に関する正しい知識を得て、自己管理ができるようにサポートすることです。
「知識を得ることが本当に治療になるの?」と疑問に感じる方もいらっしゃる方もいるかもしれませんが、五十肩のように長丁場の症状を抱えていく人には、特に正しい知識が重要になってきます。例えば、痛みがあると、動くことを極端に避ける人もいますが、このような状況が長く続くと、本当はできるはずの活動も徐々にできなくなってしまいます。患者教育には、このような状況を招かないためにも、痛みのない範囲でできる日常の活動を提案することも含まれます(参考文献⑩)。

ステロイド注射

痛みのある肩関節内にステロイド注射を行うことがあります。ステロイド注射のみでなく、エクササイズ(運動とストレッチ)と組み合わせると、エクササイズ単独と比較して痛みの緩和に効果的と言われています(参考文献⑩)。
ステロイドは、肥満、骨粗しょう症、免疫低下、にきび、満月用顔貌(顔が丸く腫れる)、高血圧、血糖値上昇などの副作用がありますので、医師に診てもらいながら治療を行う必要があります(参考文献⑪)。

病院を受診する際の目安

五十肩は、「この症状が出たら受診が必要」という明確な基準があるわけではありません。しかし、夜間に痛みが出て、睡眠に支障が出ているようでしたら、病院を受診して適切な治療を受けるのが良いでしょう。また、普通の肩こりとは違い、腕をあげようとすると鋭い痛みがあるといった症状が出ている場合にも、仕事などの普段の生活に支障を来すようであれば受診を考えても良いかもしれません。

また、肩の動きにくさと痛みが主な症状であっても、次に紹介するように、五十肩以外の原因があることもあります。この場合に当てはまる人も、日常への支障の度合いなどを目安にして、受診を検討しましょう。

五十肩とよく似た症状を示す肩の疾患

肩の動きにくさを感じている患者2027名のうち、60%が五十肩、33%が腱板損傷・腱板断裂(後ほどどのような病態かご説明します)、7%が外傷によるものであったという報告があります(参考文献⑫)。このことから、肩の動きにくさが主な症状であったとしても、五十肩以外の原因があることもあります。その代表が腱板損傷・腱板断裂になります。

腱板断裂・腱板損傷とは

腱板断裂・腱板損傷とは、肩甲骨と上腕骨をつないでいる腱板と呼ばれる筋肉の付け根(腱)が切れてしまう状態です。肩の痛みや腕の挙がりにくさの症状は、五十肩と似ていますが、五十肩と異なる点は以下の通りです(参考文献⑬)。


■肩周囲の筋肉の硬さが少ない
■肩を挙げていくと90度付近で骨がすれるような音がする

完全に切れた部位は、元に戻らないと言われていますが、切れていない筋肉の部分を鍛えるような運動などを行います。完全に切れた場合は手術をして治癒する方法もあります。なお、五十肩と腱板断裂・腱板損傷はどちらか一方とは限らず併発することもあります。

五十肩は一般的には自然に回復していく

今回ご紹介したように、五十肩は一定の期間ごとに症状が変化していき、一般的には自然に回復していくことが多いです。しかし、過度に肩を動かさないようにしたりすると、痛みが治った後も肩の動きにくさが残ってしまうこともあります。そのため、痛みの少ない範囲でできる日常の活動を維持したり、ご自身に合わせたストレッチなどのセルフケアを行うことがいいでしょう。

(梶原文規)


▼ 参考文献①
タイトル:肩関節周囲炎 理学療法診療ガイドライン
URL:http://www.japanpt.or.jp/upload/jspt/obj/files/guideline/10_shoulder_periarthritis.pdf
▼ 参考文②
タイトル:A profile of patients with adhesive capsulitis.
雑誌名:J Hand Ther. 1997 Jul-Sep;10(3):222-8.
[PMID: 9268913]
▼ 参考文献③
タイトル:Thermography of frozen shoulder and rotator cuff tendinitis.
雑誌名:Clin Rheumatol. 1992 Sep;11(3):382-4.
[PMID: 1458786]
▼ 参考文献④
タイトル:Frozen shoulder.
雑誌名:BMJ. 2005 Dec 17;331(7530):1453-6.
[PMID: 16356983]
▼ 参考文献⑤
タイトル:Etiological factors and clinical profile of adhesive capsulitis in patients seen at the rheumatology clinic of a tertiary care hospital in India.
雑誌名:Saudi Med J. 2004 Mar;25(3):359-62.
[PMID: 15048177]
▼ 参考文献⑥
タイトル:The relationship between the incidence of adhesive capsulitis and hemoglobin A1c.
雑誌名:J Shoulder Elbow Surg. 2017 Oct;26(10):1834-1837.
[PMID: 28495575]
▼ 参考文献⑦
タイトル:Are serum lipids involved in primary frozen shoulder? A case-control study.
雑誌名:J Bone Joint Surg Am. 2014 Nov 5;96(21):1828-33.
[PMID: 25378511]
▼ 参考文献⑧
タイトル:Cholesterol variability and the risk of mortality, myocardial infarction, and stroke: a nationwide population-based study.
雑誌名:Eur Heart J. 2017 Dec 21;38(48):3560-3566. doi: 10.1093/eurheartj/ehx585.
[PMID: 29069458]
▼ 参考文献⑨
タイトル:Musculoskeletal manifestations in patients with thyroid disease.
雑誌名:Clin Endocrinol (Oxf). 2003 Aug;59(2):162-7.
[PMID: 12864792
]
▼ 参考文献⑩
タイトル:Shoulder pain and mobility deficits: adhesive capsulitis.
雑誌名:J Orthop Sports Phys Ther. 2013 May;43(5):A1-31. doi: 10.2519/jospt.2013.0302. Epub 2013 Apr 30.
[PMID: 23636125]
▼ 参考文献⑪
タイトル:日本神経学会 ステロイド治療
URL:https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_05.pdf
▼ 参考文献⑫
タイトル:Contracture of the shoulder.
雑誌名:Clin Orthop Relat Res. 1990 May;(254):105-10.
[PMID: 2323126]
▼ 参考文献⑬
タイトル:日本整形外科学会 肩腱板断裂
URL:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html

  • *当記事は、健康に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の医学的見解・治療法を支持・推奨するものではございませんので、ご了承ください。
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