腰痛の基礎知識

■腰痛とは

現段階で腰痛について明確な定義はありません。一般的には第12肋骨(一番下の肋骨)の下から殿溝(お尻の割れ目)の間の領域に感じる痛みのことを指しています。
腰痛を発症する原因は様々で、大きくは①脊椎(背骨)由来②神経由来③内臓由来④血管由来⑤心因性由来に分けられています。更にその中でも腰痛は特異的腰痛と非特異的腰痛に分けられます。特異的腰痛とは、原因がはっきりしている腰痛のことです。代表的なものとしては、腫瘍(ガンなど)や感染症、圧迫骨折などが挙げられます。非特異的腰痛とは、レントゲンなどの画像所見だけでは、原因が明らかにできない腰痛のことです。レントゲンやMRIなどの検査と、症状が一致しない場合がこの非特異的腰痛になります。ヘルニアや脊柱管狭窄症はレントゲンやMRIの所見と症状が一致する場合は特異的腰痛に分類されますが、症状と一致しない場合が多く、非特異的腰痛に該当する割合は腰痛持ちの約85%にも及ぶのが現状です。
▶︎参考:腰痛の85%は、なぜ原因が特定しきれないのか?

また、腰痛は発症期間によっても急性期 / 亜急性期 / 慢性期の腰痛に分類されます。急性期は発症してから4週間未満、亜急性期は4週間以上かつ3ヶ月未満、慢性期は3カ月以上続いているものと定義されています。急性腰痛は何かきっかけがあり、突然起こるものです。よく言われる例が「ぎっくり腰」です。ぎっくり腰を含む急性腰痛はレントゲンなどの検査に異常が見られないことが多く、自然に痛みが緩和していくことが多いです。慢性腰痛は急性腰痛と違い、きっかけとして思い当たることがなく、いつ痛みが始まったのかわからない、気付いたら痛みを感じるようになっていたと訴える方が多いです。中には、急性腰痛が長引き、慢性腰痛に移行してしまうケースも少なくありません。
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■疫学

◇日本の疫学

腰痛を有する患者数は極めて多く、日本人の有訴率の中で、男性は第1位、女性では肩こりに次いで第2位となっています。厚生労働省によると腰痛を有する人は全国2800万人に達すると言われています。実に4人に1人が腰痛持ちと推計されています。また、日本の生涯有病率(一生のうちに患う確率)は84%と言われており、10人に8人は人生の中で1度は腰痛を経験しているということになります。

◇原因

腰痛となる原因はいくつかあります。

【仕事の内容】

一つ目は仕事内容です。身体の負担が大きい重労働が腰痛発症の危険因子です。仕事中に同じ姿勢を長時間続けなければいけない、前屈みや体を捻る動きを反復して行う、腰を曲げた状態で重いものを持ち上げるなどの作業は腰痛の頻度を増加させています。
▶︎参考:腰痛になりやすい仕事の内容は!?

【生活習慣】

二つ目は生活習慣です。生活習慣で腰痛を発生させてしまう要因としてあげられているのが、運動不足喫煙です。
熱心な運動習慣がある人とそうでない人では、運動習慣がある人の方が腰痛の頻度が少ないことがわかっています。しかし、筋力と体の柔らかさと腰痛はまだ関係しているがどうかはわかっていません。筋力が強いから腰痛にならない、体が柔らかいから腰痛にならないというわけではなく、普段からの運動習慣の方が腰痛の発症を予防することが可能です。
▶︎参考:腰痛を予防するために必要な運動とは

次に喫煙については、中等度〜重度の喫煙量は腰痛発症の危険因子とされています。つまりヘビースモーカーであればあるほど、腰痛の発生リスクは高まってしまうということです。
▶︎参考:喫煙者は腰痛のリスクが高い!?喫煙と腰痛の意外な関連性

少し意外なのが肥満と腰痛にはまだ明確な関係性は認められていないことです。よく体重が増加することで腰の不調を訴える方はいらっしゃいますが、体重が増えたことが悪さをしているわけではないのかもしれません。
▶︎参考:肥満は腰痛に関連するか

【ストレス】

近年になり、腰痛の発症や慢性化のリスクとして、職場の人間関係などのストレスが報告されています。ストレスを感じると、脳が痛みを感じやすい状態となってしまい、腰痛の原因になります。腰痛が慢性化している方や、なかなか治療しているけれども改善しないという方には、このストレスの要因が影響している可能性もあります。
▶︎参考:うつ状態が腰痛に与える影響とは!?
▶︎参考:マインドフルネスの慢性腰痛への効果

◇自然経過について

腰痛の長期経過やその経過を予測する因子を調査する研究は、対象とする腰痛の種類や腰痛に対する治療が様々であるため、信頼性の高いものは限られています。
腰痛の程度は発症後約1ヶ月で発症時の約60%に急速に改善し、3か月後まで緩やかに改善があるとされています。しかし、約60%の患者は12カ月後も腰痛を有すると言われています。
▶︎参考:あなたの腰痛、そのままにしておくとどうなる!?

腰痛が長引いてしまう原因として研究されている結果としては、心理社会的因子つまり心理的苦悩や抑うつ気分などのストレスや不安が大きく関係していると言われています。身長や体重、体の硬さや筋力などとの関係はまだはっきりとわかっていません。また、勤労者の慢性腰痛患者を対象にした研究では、長期休業に影響しているものとして先ほど述べた心理的要因に加えて、喫煙、重労働、小規模事務所などその人の仕事内容や、職場環境も影響していることが分かってきています。
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■腰痛の種類とその症状

■特異的腰痛

◇腰椎椎間板ヘルニア

腰の骨と骨の間には椎間板というクッションのような組織が存在します。通常その椎間板の中は水分で満たされていますが、加齢や負担とともに椎間板が薄くなり、中の水分が後方に飛び出て、脊髄などの神経を圧迫してしまい、腰や脚に痛みを引き起こしてしまうものです。
好発年齢は20歳代、30歳〜40歳代、次いで10歳代、50〜60歳代の活動性の高い男性に多いとされています。比較的若い年代に多く、重量物を持ち上げたり、スポーツなどの力学的負担がきっかけになることも少なくありません。
腰椎椎間板ヘルニアの症状は、主に片側の腰の痛みとお尻から足の痛みを引き起こします。これは椎間板の真後ろは強靭な靭帯で守られているため、中の水分が飛び出す時には、真後ろに飛び出てくることは少なく、少し横にずれて飛び出ることが多いためです。足の痛みやしびれなどの異常感覚は、ヘルニアが起こった場所によって異なりますが、多くは脛(スネ)の前と外側、親指、小指〜足の裏にかけて起こります。また、片側の腰痛と脚の痛みを引き起こすため、痛みが強い時は腰を真っ直ぐに保てず、どちらかに傾いた姿勢をとるようになってしまうことも特徴です。体をかがめ、片側の腰に手を当てたり、かばうように片側の膝を曲げたりして歩きます。注意が必要なのは、両脚のしびれや痛み、尿漏れや残尿など排尿がうまくできないといった症状がある場合は、真後ろに飛び出てしまっているヘルニアの可能性があり、早期に手術が必要になるケースもあります。
椎間板は腰が曲がって捻れるストレスに弱いため、長時間の座り姿勢や腰を曲げる、中腰姿勢をとったりすると症状が悪化します。逆に腰を後ろに反ると症状が軽減することが多いため、座っているより立っている方が楽という人はこの腰椎椎間板ヘルニアかもしれません。
▶︎参考:あなたのヘルニアは何タイプ!?実は自然に改善することも
▶︎参考:ヘルニアの再発予防は”生活習慣の改善”から

◇腰部脊柱管狭窄症

腰の骨の後ろには脊柱管という脊髄神経の通り道があります。この脊柱管が骨の変形や腰の靭帯が分厚くなったりして、狭くなることで神経症状が出現するものです。脊柱管狭窄症は様々な疾患や病態が混ざっています。というのも、脊柱管が通常より狭くなり、神経を圧迫するような状態であれば広い意味では脊柱管狭窄症に分類されます。脊柱管が狭くなるのも、加齢に伴い骨や靭帯が徐々に変形してくる場合もあれば、腰の骨を骨折した後に、治る過程で骨が変形するなど色々な理由があります。そのため脊柱管狭窄症は一つの疾患というよりも、様々な腰の疾患に見られるものとして考えた方が適当です。
脊柱管狭窄症に特徴的な症状は間欠性跛行というものです。間欠性跛行とは歩くときに出現する症状で、歩いていると脚の痛みや痺れが強くなり、一時的に歩くのが困難になるものの、体を前にかがめたり、しゃがみこんだりすれば、また歩くことができるというものです。つまり脊柱管狭窄症は腰椎椎間板ヘルニアとは逆で立っていたり、歩いていたり腰を反ると症状が悪化し、体を前に屈めたり、座っている方が楽になるものです。
腰椎椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症はレントゲンで大方予想はできますが、実際に神経が圧迫されているかどうかはMRIを撮影してみなければわかりません。

◇腰椎すべり症

腰椎すべり症は1つの腰の骨だけが前方のずれてしまう状態のことです。このズレにより、腰の骨の位置関係が変わり、腰の神経や関節の動きに影響を与えてします。
原因としては
① 脊椎分離症から安定性を失った背骨が前に滑り出てしまう
② 椎間板や関節など動く部分が変形してしまい、前に滑り出てしまう
その他にも症例数は少ないですが、生まれつき背骨の形に異常がある場合や、交通事故などの外傷から背骨が不安定になってしまい生じる場合もあります。

◇腰椎分離症

腰痛分離症は青少年期のスポーツが原因と考えられており、小学生〜高校生にかけて多い疾患です。腰椎分離症とは、腰椎には椎弓という腰の関節を構成している部分がありますが、そこが骨折してしまうものです。成長期の活発な運動により、腰の過度な使用となり、関節に負担がかかり骨折してしまいます。多くは腰を反って、ひねる動作で痛みが出現します。野球のスイングやバレーボールのスパイクなどひねる動きが多いスポーツに好発します。
腰椎分離症はいわゆる骨折している状態であるため、硬性(硬い)コルセットを装着し、骨が繋がるまで安静にしなければなりません。小学生で見つかった腰椎分離症に関しては安静により治癒が見込めますが、高校生になるとこの骨が治癒する確率は下がってしまいますので、早期発見が重要になってきます。もし、スポーツをしていて腰をひねる動きで痛みがある場合は、一度レントゲン検査を受けた方が良いかもしれません。
腰椎分離症を高校生以上で発症した場合は、一般的には骨が繋がることは期待できないため、腰痛が支障とならなければ、スポーツは禁止する必要はありません。それよりも体の使い方や筋力の改善などの運動療法、動作練習を行う方が良いでしょう。
この腰椎分離症を発症し、骨が繋がらなかった場合は、将来的には腰椎分離すべり症というものに発展してしまう可能性があります。

◇圧迫骨折

腰椎圧迫骨折は腰椎に屈曲圧迫力が加わり、本来四角形である背骨がくさび形に潰れてしまう状態です。腰が勢いよく曲がる力が加わる状態であるため、勢いよく転倒して尻もちをついてしまったり、ラグビーなどのスポーツでタックルした時や、高所からの転落などで生じます。また高齢者の場合は、骨粗しょう症を合併していて、骨がもろくなっている場合は、くしゃみをしただけでも生じる場合があります。
圧迫骨折が生じた場合は、硬性コルセットを作成し、腰に曲がる負担がかからないようにします。また痛みに応じてですが、腰を曲げる腹筋や股関節の前の筋肉を鍛えることは禁忌で、背筋の筋力を鍛える運動療法を実施していきます。

■非特異的腰痛

◇筋・筋膜性の痛み

筋・筋膜性腰痛とは筋肉の問題による腰痛のことです。筋肉は筋膜という膜状の組織に包まれています。この筋肉と筋膜に何らかの問題が生じ、傷んでしまい痛みを感じるものです。
筋肉はゴムの様に伸び縮みし、この筋膜の間を滑るように動いています。しかし筋肉の使いすぎや、急に力を入れて痛めてしまうことによって筋肉には筋スパズムという凝りが生じます。この凝りが筋肉と筋膜の動きを悪くし、筋肉内の血液循環を悪くし、痛みを生じさせます。

◇椎間関節性の痛み

腰椎は全てで5個あり、それぞれの骨の間には椎間関節という関節が存在しています。この関節に負担がかかり痛みが生じる痛みが椎間関節性の痛みです。腰椎の関節は、関節の向きからして体を前に曲げる・後ろに反らすことを得意としています。しかし、体を捻る・横に倒すといった動きは不得意で、関節に負担をかける形になります。関節に負担がかかることにより関節の軟骨が擦り減ったり、炎症を起こしたり、関節の周りにある靭帯などを痛めてしまい痛みにつながってしまいます。
筋・筋膜性腰痛と椎間関節性腰痛に関してはレントゲンやMRIに異常が写ることはありません。痛みの出現する動きや、押さえて痛い箇所などから判断してどこの組織が痛んでいるのか確認して判断していきます。

◇椎間板性の痛み

椎間板性の痛みは椎間板ヘルニアと似ています。椎間板ヘルニアは椎間板の中の水分が飛び出してしまった状態ですが、飛び出す手前の時に感じるものが椎間板性の痛みです。椎間板の周りには水分が出ないように補強している繊維が重なり合って層を作っています。この層の中で、最も外側にある層に痛みを感じる組織が存在しています。この層が何らかの要因で傷ついたりすると痛みを感じるようになります。
椎間板は構造上、前側が潰れるのと捻れるストレスには弱くできています。つまり普段から腰を丸く姿勢を長くとる、腰が丸くなった状態のまま体を捻るような作業をしている人は痛めやすくなってしまいます。
体を曲げると腰が痛い、さらに体を捻るともっと痛くなる。しかし脚のしびれなどは特に感じないという人はこの椎間板が痛んでいるかもしれません。ゆくゆくは椎間板ヘルニアに発展してしまう可能性も秘めていますので、姿勢や体の使い方に注意し、体のストレッチをして予防する必要があります。

◇仙腸関節性の痛み

仙腸関節とは骨盤と背骨の一番下にある仙骨をつなぐ関節のことで、下半身と上半身をつなぐ、土台となる関節です。この仙腸関節の周りには靭帯や関節包という組織が豊富に存在しており、そこには痛みを感じる組織がたくさんあります。この仙腸関節は他の関節とは異なり、2〜3ミリしか動かないと言われています。この関節が不意に大きく動いてしまうことで捻挫を起こしたり、関節が引っかかってしまったりする(ロックする)ことで痛みを感じるようになります。多いのが、女性の生理の時や出産前後での腰部痛がこれに当たります。生理の時は女性の骨盤周辺の靭帯は緩み、関節が不安定な状態になり、周りの筋肉に過剰な負担がかかります。また出産時にはこの仙腸関節が外れて骨盤が開かなければ子供が出てくることができませんので、靭帯が傷ついて、これも関節が不安定な状態となっています。出産時には一度不安定な状態になりますが、時間経過とともに元に戻りますので、心配は要りません。
仙腸関節の痛みは一般的なヘルニアや脊柱管狭窄症よりは少し下の方の骨盤に近い箇所が痛くなり、お尻や太もと、股関節の付け根の方まで痛みが広がることもあります。
仙腸関節痛の判定は関節を直接動かしたり、押さえたりして痛みが再現できるか確認します。治療としては炎症の緩和や鎮痛を目的とした投薬や注射、骨盤周囲の安定化を図る骨盤ベルトや軟性コルセットを使用すると症状の緩和が図れます。

◇心因性の痛み

最近の研究では腰痛と心理面は深く影響していることがわかってきています。
仕事をしていて腰痛を有している場合、その腰痛が治りにくい要因としてうつ状態、仕事上の人間関係の問題、仕事上の不満などが挙げられています。
また腰痛が軽いにも関わらず、重度の機能障害(日常生活への悪影響)を持つ患者は、高齢、ストレス、うつ状態、過労、仕事の内容・収入・環境への低い満足度、人間関係の不良を抱えており、その患者の社会的背景が影響を及ぼしていることも報告されています。
現代の社会はストレス社会で、仕事や将来への不安・不満、家庭を含む周囲環境のストレスに対するケアも必要ということが分かります。
▶︎参考:うつ状態が腰痛に与える影響とは!?
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■検査・診断

腰痛患者が病院を受診した時にもっとも重要なことは、重症な脊椎の病気(腫瘍・炎症・骨折など)を見逃さないことです。その危険信号として確認される項目は、

  • 癌の既往があるか
  • 原因のわからない体重減少
  • 特に決まった時間や動きに関係のない腰痛
  • 範囲の広い足のしびれや痛み
  • 発熱
  • 胸部痛

などが挙げられています。これらの危険信号の有無を注意深く問診し、診断していきます。もし危険信号が確認された場合は、画像検査や血液検査などにて精査し、原疾患の特定をしていきます。
次に危険信号が認められなかった場合は、神経症状(しびれや触られている感覚が鈍いなどの異常感覚、力が抜ける・入らないといった筋力低下)があるかないかを検査していきます。特に初診時には神経症状が急速に進行している場合や、明らかな筋力低下、排尿・排便のコントロールができないといった症状に注意する必要があります。神経症状が確認された場合は画像検査や侵襲的検査(椎間板造影や脊髄造影検査のことで、初診時や発症して間もない腰痛に関してはあまり推奨されていません。)、身体検査を行い、神経に異常があるか確認していきます。
もし、神経に異常があれば代表的な症状としては

  • 片側の足の痛みが腰痛よりも強い
  • 膝から足の指にかけて広がる痛み
  • 画像診断で異常のあった部位と一致するしびれと感覚の鈍さ
  • 下肢伸展挙上テスト(仰向けで寝て、膝がまっすぐの状態で脚を上げて
    いき、しびれや足の痛みが出現したら陽性)の陽性

が挙げられます。
これらの危険信号・神経症状を有していないものが非特異的腰痛であり、腰痛の中でもっとも多いものになります。非特異的腰痛の場合は痛みなどの症状に応じて4〜6週間の保存的治療(手術以外の治療)を行います。改善が見られる場合は自己管理方法の指導や日常生活指導などの患者教育を中心に進めていきます。もし改善が見られない場合は、画像検査や危険信号の評価を再度実施する手順になります。
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■治療

◇物理療法

●温熱療法(腰を温める治療)

温熱療法は発症から3ヶ月以内の腰痛に対しては短期的には有効ということがわかっています。さらに温熱療法と運動療法を併用して実施することによって、さらに高い効果が得られます。3ヶ月以上の腰痛に対して温熱療法は有効であるかはまだわかっていません。また寒冷療法の効果もまだ証明されていません。もし、腰痛を発症した場合には冷やすより温めた方が良いことがわかっています。
▶︎参考:腰痛は温めた方が良いか?冷やす方が良いか?

●電気療法

電気治療は腰痛に対する効果があると報告しているものと、無効果であると報告しているものが複数存在しており、一定の結論には至っていません。
▶︎参考:慢性的な腰痛に電気治療は効果があるのか!?

●牽引療法

牽引療法は腰痛には有効である可能性は低いとされています。一方、座骨神経痛を有する腰痛に関しては、症状が悪化してしまう可能性もあるとされており、効果があるかどうかはまだわかっていません。
▶︎参考:どのような腰痛に牽引は効果的か

●薬物療法

腰痛に対して病院で処方されるような痛み止めの薬は有効であることがはっきりしています。第1選択に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)・アセトアミノフェンが推奨されており、これらの効きが悪ければ第2選択として急性腰痛に対しては筋弛緩薬、慢性腰痛に対しては抗不安薬・抗うつ薬・筋弛緩薬・オピオイドが推奨されています。
腰痛を管理していく上では、痛みのコントロールをするのに薬物は有効であると言えます。
▶︎参考:解熱鎮痛薬であるアセトアミノフェンは腰痛に効果的か

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■予防

腰痛の予防といっても、いろいろな捉え方があります。
大きく分けて3点あり、それぞれ予防に有効と言われている手段は異なっています。

① 初発腰痛の発症予防

初発腰痛の発症予防に有効と言われているのは、運動療法です。運動療法とは主に、腹筋・背筋の筋力トレーニング、ストレッチング、ウォーキングやランニングなどの有酸素運動のことで、病院のリハビリテーションやジムでのトレーニング、エアロビクスなど様々な場所で用いられています。
つまり腰痛の発症を防ぐには、常日頃から運動の習慣をつけておくことが重要となってきます。
▶︎参考:腰痛を予防するために必要な運動とは

② 腰痛の再発予防

腰痛の再発予防にコルセットを装着することが推奨されています。コルセットを着用することで、腰痛を感じていた期間が短く、また再発予防につながるとされています。現在はコルセットも薬局やスポーツ用品店など既製品も多く販売されており、比較的病院でなくても手に入れやすいようになっています。
コルセットにも色々種類があり、どれを選んでいいかわかりにくいかもしれません。大きく分けてコルセットには弾性コルセットと硬性コルセットがあります。
弾性コルセットはゴムで伸びるようになっていて、柔軟性があり、どんな体型の人にも合いやすく、つけていても動きやすいというメリットがあります。ただ動きやすいということは、固定する力は弱いということです。急性腰痛などなるべく腰部を固めて、動かさないようにしたい時は向いていないかもしれません。
硬性コルセットは金属やプラスチックの支柱が入っていたり、病院で体型に合わせて採型して作ったりします。主に急性腰痛や腰椎分離症など、腰部の固定を図りたい時に用いられ、固定する力は強いものとなっています。固定力が強いものですので、動きにくさがあり、皮膚が装具と擦れて痛かったりすることもあります。また、慢性腰痛のようにひどい腰痛でない場合は、ここまで強く固定できるコルセットは必要ありません。
大まかに説明しましたが、自分の痛みの程度や生活のスタイルに合ったものを選ぶと良いかと思います。しかし、コルセットの使用を長期間続けると、体幹の筋力が明らかに低下することが分かっていますので、コルセットに依存しすぎないことが重要です。
▶︎参考:腰痛にコルセットは効果的か

③ 急性腰痛から慢性腰痛への移行予防

腰痛発症後に普段の活動量を維持することが腰痛の蔓延予防に有効とされています。昔は腰痛を発症したら、安静にして寝ている方が良いと思われていましたが、研究結果により安静は必要ないことが明らかになってきました。
それよりも発症後早期から、痛みに応じた活動量の維持が有効です。しかし、腰痛発症後は激痛で、動くにも動けないこともあると思います。そのような場合は、痛み止めなどで痛みの緩和を図ったり、医療機関に行き、医療職の指導のもとストレッチや筋力訓練を行い、腰部にかかる負担を軽減したりすることが推奨されます。
▶︎参考:腰痛になったら安静にすべきか

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■非特異的腰痛の考え方、まとめ

なぜ腰に負担がかかってしまうのでしょうか?

腰椎はもともと構造的に前にかがんだり、後ろに反ったりすることには優れていますが、からだをひねったり、横に倒したりする可動域(関節が動く範囲)は少ない部位です。からだをひねったり、横に倒したりするのに優れている関節は胸郭(肋骨、背中周りのこと)と股関節です。これらの関節は普段の姿勢や筋力によって動きを制限されやすい関節です。この動きを補ってしまうのが、腰椎です。そのため、本来かかるはずのないストレスが腰にかかってしまい、腰椎周辺の組織(椎間板や椎間関節)、筋肉を痛めてしまいます。単純に腰痛と言っても、人間の体は精密にできていますので、全身から影響が来るということを頭に入れておかなければなりません。
運動療法を選択するにしても、どれを選択していいのかわからないことはよくあります。腹筋運動が効果的だった人もいれば、逆効果だった人もいます。ストレッチをすることで良くなる人もいれば、あまり変わらない人もいます。その人が感じている腰痛はその人の身体の機能(筋力や柔らかさ)、仕事内容、生活習慣、心理的ストレスなど様々な要素が混在して作り上げられているものです。これら全てを加味して、自分にあった腰痛との付き合い方や身体のケア方法を見つけていくことをお勧めします。
▶︎腰痛タイプチェックはポケットセラピストへ

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■参考文献

  1. 腰痛診療ガイドライン2012
    • 監修:日本整形外科外/日本腰痛学会
    • 編集:日本整形外科学会診療ガイドライン委員会・腰痛診療ガイドライン策定委員会
    • 発行年月日:2012年11月15日
    • 発行:南江堂
  2. 標準整形外科学 第10版
    • 監修:国分正一 鳥巣岳彦
    • 編集:中村利孝 松野丈夫 内田淳正
    • 発行年月日:2008年4月1日
    • 発行:株式会社 医学書院
  3. 伊藤俊一:腰痛症の評価と治療(1998)、理学療法学 第25巻第8号
    pp511-514
  4. 吉村典子,村木重之岡 敬之,他. 腰痛の疫学−大規模疫学調査ROADから
    日本整形外科会雑誌. 2010;84;437-9.
  5. 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン(改訂第2版)
    • 監修・編集:日本整形外科学会、日本脊椎脊髄病学会
    • 発行年月日:2011年7月
    • 発行:南江堂
  6. 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2011
    • 監修・編集:日本整形外科学会、日本脊椎脊髄病学会
    • 発行年月日:2011年11月
    • 発行:南江堂

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