「徹底的にやる」マインドで挑む健康経営
メンタルヘルスの一次・二次予防にポケットセラピスト
総務・人事本部 グループ安全衛生部
部長 佐野 淳 様
保健師 木下 あけみ 様
保健師 永山 夏江 様
保健師 杉木 えり子 様
保健師 新井 恵理沙 様
キヤノンマーケティングジャパン株式会社は「健康経営銘柄2024」に選定されるなど、健康経営の実現に向けた取り組みを積極的に推進されています。本日は、グループ安全衛生部 部長の佐野様はじめ、保健師の木下様、永山様、杉木様、新井様にお話を伺いました。
- 社名
- キヤノンマーケティングジャパン株式会社
- 事業内容
- キヤノン製品および関連ソリューションの国内マーケティング
- 設立
- 1968年(昭和43年)2月1日
- 資本金
- 73,303百万円
- 従業員数
- 連結:16,089名 単独:4,528名(2023年12月31日現在)
- 事業所
-
本社:東京都港区
事業所:港南事業所、幕張事業所
支店:札幌支店、仙台支店、名古屋支店、大阪支店、広島支店、福岡支店
営業所:全国30箇所 - URL
- https://canon.jp/
3つのきっかけから強化した健康経営の歩み
「健康第一主義」に基づく取り組みとは
はじめに、事業内容を教えてください。
佐野様(以下、敬称略):当社はキヤノングループの中で日本国内のマーケティングを担っており、大手企業から中小企業、専門領域や個人のお客さまにまで、それぞれに最適なソリューションを提供しています。
キヤノン製品とITソリューションを組み合わせた事業も強化しており、ITソリューション事業は全体の売り上げの約半分を占めています。さらに、新たな事業の創出にも取り組むことで社会課題解決の領域を広げ続けています。
健康経営銘柄にも選定され、健康経営の推進に力を入れている貴社の健康経営推進の背景を教えてください。
佐野:当社は「健康第一主義」に基づき、従業員の健康の保持増進に取り組むことが従業員とその家族の幸せ、ひいては持続的な企業価値向上をもたらすととらえ、健康経営を推進しています。

木下様(以下、敬称略):キヤノンの前身である精機光学工業株式会社初代社長である御手洗毅(たけし)が産婦人科医であった影響で、「健康第一主義」が経営理念にあり、健康を大事にする社風が元々ありました。その上で、当社が健康管理の取り組みを強化するきっかけが3つあります。
土台となる文化があったのですね。取り組み強化の3つのきっかけを教えてください。
木下:まずはじめに、2004年の組織体制の変化です。
安全衛生を担当する部門は人事部門の中に1名でしたが、安全衛生課と呼ばれる課を新設し、保健師はキヤノン健保の出向から会社所属の保健師となりました。背景としては、当時の人事責任者の「会社の施策として、保健師が人事と一体になって取り組んでほしい」という考えがあったためです。
次に、2010年以降から始まった「健康管理3カ年計画」です。
2010年以前は、年度ごとに計画や方針を立てPDCAを回して実施していましたが、1年ごとの取り組みでは短期的な視野に偏ってしまうことがありました。より成果を出すために、3年ごとに計画を立て、中長期的な視点で健康課題を解決する方法を採用しました。
最後は、2018年にグループ健康管理体制ができたことです。
2017年以前は、キヤノンマーケティングジャパングループの個社ごとで健康管理を行う体制でした。しかし、グループ本社の機能強化、構造改革の一環として、グループ社員全員の健康管理を一体的に行う方針となりました。具体的には、地区ごとに健康支援室を置き、その地区の社員についてはグループ会社の垣根なく支援に取り組んでいます。
健康支援室の体制はいかがでしょうか。
木下:グループ安全衛生部内の8つの健康支援室が健康経営を推進する中枢となっております。この8つの健康支援室で約1万6000名のグループ社員の健康管理を行っています。保健師は、おおむね社員750名に1人ぐらいの割合です。
保健師の体制が整っていることが理解できます。現在、貴社の保健師が注力している健康課題はどのようなものになりますか。
木下:当社の健康課題へのアプローチとしては、生活習慣病(メタボ)・がん・メンタルヘルスの3つが中心です。
この20年で重点施策も変化しており、定期健診の要受診者・がん検診の受診率を引き上げに注力していた時期もありましたが、両立支援や傷病者・休職者のサポート、生活習慣病や重症化予防と少しずつ軸を移してきています。現在は、メンタルヘルスやアルコール対策、コミュニケーション活性やワークライフバランス、女性・高年齢社員の健康問題など、今まで手をつけてこられなかった課題にも注力しています。
本日ご出席の永山さま、杉木さま、新井さまはメンタルヘルスの施策を担われているとお伺いしています。どのようなことに取り組まれているのでしょうか。
永山様(以下、敬称略):グループ安全衛生活動方針の中で「こころの健康づくり対策の強化」として今年度4つの項目を重点的に取り組んでいます。
ストレスチェック結果を用いた職場環境の改善、パワーナップの導入による睡眠休息の強化、管理職によるメンタルヘルスマネジメント力の強化、そして痛みへの個別支援によるストレス軽減対策として、ポケットセラピストの活用です。こうした取り組みによりアブセンティーイズム・プレゼンティーイズムの改善、ワークエンゲージメントの向上を目指しています。

身体愁訴からメンタルヘのアプローチ
6ヶ月間の伴走支援が従業員の健康を変える
ポケットセラピストの活用・利用背景を教えて下さい。
永山:ストレスチェックを2016年に開始し、毎年の分析結果の推移を見ますと、全国平均と比較した時に身体愁訴の項目が全国平均よりも高い状況だったため、対策を検討していました。
項目別に分析をしたところ、痛みの症状が強いとストレス率も高くなり、プレゼンティーイズム・アブセンティーイズムも高くなることが分かりました。また、肩こり・腰痛・目の疲れ・頭痛など体で痛むところが多い人ほど相関的にプレゼンティーイズムや高ストレス率が顕著に高くなることも分かり、身体愁訴からメンタルへのアプローチが可能なポケットセラピストを導入をいたしました。
保健師の皆さまが運用の中心を担っていますが、従業員の方々に活用いただくための工夫や大切にしていることはありますか。
新井様(以下、敬称略):より多くの社員に利用いただくこと、最後まで継続できることを考慮し面談利用可能期間を6ヶ月1クールとし、年2クールで運用しています。当初は3ヶ月間の利用を予定していましたが、効果が出ていることからベストな運用であると考えています。
より効果的に利用いただくため、利用は誰でも可能とせず、当社独自のアンケートから現状の痛みの症状やそれに伴うパフォーマンスの影響度をとり、利用いただく方を決定しています。
社内への申し込み案内時も、より症状が強い方に活用いただく意図が従業員へ伝わるよう症状改善データを掲載するなど案内を工夫しています。また、利用ハードルを上げないよう面談とエクササイズは就業時間中も会社のPCで利用できることを案内しています。
募集・案内方法から利用期間まで、工夫されて運用していることがわかります。保健師の視点から見たポケットセラピストの効果・評価ポイントをぜひ教えてください。
杉木様(以下、敬称略):医療機関に行かなくても、気軽に国家資格を持つ医療職にオンラインで相談ができ、月の回数の制限なく個別の痛みに対応いただけることを評価しています。特に、高ストレス者の利用者は短期的には肩こり・腰痛などの痛みの改善効果が出ており、長期的には個別のメンタルヘルスの改善にも繋がっています。
参加者からは「知りたいことを的確にアドバイスいただきました」「いつも笑顔でお話を聞いていただいて、気持ちが安らいでいます」などのポジティブなコメントもいただき、従業員の満足度も高いです。
また、定期的に利用前後の評価レポートをバックテック社から提供いただくことで、費用対効果など、保健師だけでは手がつけられていない部分の可視化も健康経営の推進において役立っています。

「やるからには徹底的に」が従業員の健康を守る
ポケットセラピストを通じた継続的サポートに期待
緻密な運用で効果も出ている貴社ですが、どのようなマインドセットをお持ちなのでしょうか。
木下:やはり、「やるからには徹底的に」を意識して活動しています。ポケットセラピストにおいては、本当にサポートを必要としている方々へ届けるべきですし、やるからには徹底して効果を出したいと思っています。
もちろんポケットセラピストだけではなく、健康診断の事後措置である要受診者の受診報告率は100%を保ち、がん検診の受診率も倍増させるなど、あらゆる施策において「サービスとしてやっている」という姿勢ではなく、戦略的に取り組んでいます。
そのマインドセットを日々の運用姿勢から感じております。最後に、バックテック社・ポケットセラピストへの期待をお伺いさせてください。
杉木:どうしても途中で利用頻度が下がってしまう方、利用自体を中断してしまう方がいらっしゃいます。ポケットセラピストを通じて効果を感じてもらうためにも、継続して利用いただけるようなフォローや仕組みづくりを期待しています。
また、利用者の状況を確認できる管理画面も、利用者管理の手間が軽減される一方で、リアルタイムに利用者の特徴や効果を見たいと考えています。
佐野:利用期間の6ヶ月を過ぎた後でも継続的にセルフケア促進の一つの手段として活用できるよう、機能の拡充を期待しています。
また、手を挙げて希望する社員も多い中で限られた人数で利用をしていることから、利用の離脱がないよう、保健師の工数を極力かけずに継続できるような仕組みをより充実させていただきたいです。