ハイリスク×ポピュレーションアプローチで従業員の健康支援に挑む
重症化予防と健康増進に向けた取り組みとは

常務理事 津田 秀明 様(中央)
事務長  山本 さゆり 様(中央左)
保健師  舟久保 恵美 様(中央右)
保健師  眞野 満知子 様(右)  
スタッフ 清水 昌子 様(左)

株式会社内田洋行は、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定され、「健康経営優良法人2021」より4年連続で認定されています。内田洋行健康保険組合は、株式会社内田洋行を母体として1971年に設立し、現在、グループ会社18社の健康管理を行っています。本日は、内田洋行健康保険組合の津田様、山本様、舟久保様、眞野様、清水様の5名にお話を伺いました。

組織
内田洋行健康保険組合
設立
昭和46年10月1日
加入事業所数
(株)内田洋行グループ18事業所
被保険者数
4,250人(平均年齢45.0歳)
被扶養者数
2,943人
事業所
東京都中央区
URL
https://www.uchidakenpo.or.jp/

重症化予防と健康増進の両立に注力
健保保健師による事業主との連携が鍵

はじめに、事業内容を教えてください。

津田様(以下、敬称略):内田洋行のコーポレートビジョンである「情報の価値化と知の協創をデザインする」をもとに、3つの柱の「公共関連事業」「オフィス関連事業」「情報関連事業」に加え「ICT」「環境」の融合によって、独自性ある「働く場」と「学ぶ場」の創造を進めています。

具体的には教育・公共機関へのシステムやサービスの製品提供、働く場をデザインし新しいオフィスを提案すること、各分野、業種に対応した業務システムソフトウェアやIT製品をベースに顧客の視点に立ったソリューションを提供しています。

本日、ご出席の皆さまの健保内での役割をお伺いさせてください。

津田:常務理事として、健保の運営・財政面や様々な施策の責任者として従事しています。

山本様(以下、敬称略):事務長を務め、常務理事のもと業務関連・保健事業の実現化、特に保健事業を強化しております。

舟久保様・眞野様(以下、敬称略):当組合は保健師2名が所属しています。医療職の専門的な視点から重症化予防、健診結果の管理等の業務に従事しています。

清水様(以下、敬称略):私は主に経理全般を担当しております。保健事業では、健診業務やAI姿勢健診の実施補助等を担っています。

ありがとうございます。現在、保健事業で注力していることを教えてください。

津田:データヘルス計画に基づく健康増進プログラムとして、生活習慣病の発症と重症化予防を目指した「ハイリスクアプローチ」と、疾病予防・健康増進のための「ポピュレーションアプローチ」を積極的に実施しています。

具体的には、10のメニューに健康情報提供サイトを加えた「健康推進10+1のプログラム」を設け、ICTを活用した健康増進施策の実施等、コラボヘルスの推進を図り健康改善に取り組んでいます。

コラボヘルスの推進を図り健康改善に取り組みについてお話しされる津田常務理事。

重症化予防と健康増進に注力されているのですね。具体的にどのような取り組みなのでしょうか。

津田:ハイリスク者へのアプローチでは、リスクレベルの高い社員へ適正治療や食事・運動改善に向けた支援を行い数値改善を図っています。また、顧問医と提携したことで、実際にハイリスク者の減少にも繋がっています。

ポピュレーションアプローチに関しても、さまざまな取り組みを行っていますが、中でも運動促進や体の痛み対策の一環としてポケットセラピストを活用しています。

ポピュレーションアプローチは、「加入者の参加率を上げる」こと、「自分の症状を自己認識し意識変容に繋がるアプローチができる」こと、「ヘルスリテラシーの向上」が最も重要だと考えています。ヘルスリテラシー向上のために、健保加入者に対して月1〜2回の健康情報「UCHIDA元気情報」を配信しています。また、2023年からはバックテック社が実施する「AI姿勢健診」を新たに展開し、その場ですぐに身体のゆがみ・将来の身体の状態の予測ができる体験型の健康イベントを通じて、意識変容にアプローチする工夫をしています。

ポケットセラピストやAI姿勢健診をご活用いただきありがとうございます。
保健師の舟久保様、眞野様はどのようなことを意識して保健事業に取り組まれていますか。

舟久保:企業保健師と異なり、当組合は加入事業所が18社あるため、全体を見れることが強みだと感じています。健保に所属しているとレセプトや治療状況を見ることができるので、それらの状況を意識し重症化予防のアプローチ、18社全体の底上げを行っています。

眞野:産業保健職は各事業所にいないため、事業所の担当者と連携をし、従業員の健康管理を行っています。
特に、事業所の担当者に行っていただくことと、健保が取り組むこととの役割をふまえた上で、なおかつ効率的に対応ができるよう模索しながら進めています。担当者もさまざまな立場なので状況を理解しながら、健保保健師を活用いただけるよう意識しています。

フィジカルとメンタルの両面にアプローチ
保健師の業務負担軽減にも貢献

ポピュレーションアプローチの一つの手段としてポケットセラピストを活用いただいているかと思います。導入背景を教えてください。

舟久保:私自身、慢性痛の研究職をしていた背景があり、特に天気が悪くなると体調を崩してしまったり、頭痛や肩こりなどが起こる気象病を専門としていました。そのような痛みの症状に悩む方を1人でも救いたく、何か保健事業で実現できないかと考えていたところ、バックテック社の存在を知り、ポケットセラピスト創業の思いに共感しました。

当組合は健保組合としては珍しく、グループ企業からの委託を受け、健保保健師がストレスチェックの共同実施者となっています。ストレスチェックの結果を分析し、高ストレス者に該当する方々は肩こりや頭痛などの慢性痛を抱えている割合が高く、ストレスと身体の痛みは関連していることも分かりました。そのため、慢性痛事業を立ち上げ、痛みの改善の切り口から加入者全体へアプローチできる手段としてポケットセラピストを導入しました。

保健師の視点から見た、ポケットセラピストの効果・評価ポイントをぜひ教えてください。

眞野:身体の痛みがあって運動ができないけれど生活習慣病のリスクが高い方へのアプローチや、ストレスチェックの結果を元に、身体の痛みがある方に相談先の一つとして利用を促進しています。そのような方々にもポケットセラピストの面談利用でフォローいただき、ありがたい存在です。また、病院の受診勧奨から実際に通院するまでの間の繋ぎ目の役割としても機能している点も評価しています。

舟久保:例えば、メンタル不調者の方に心療内科や精神科の受診の手前として「ポケットセラピストで相談してみませんか」と繋げています。定期的に医療職と話すことで、身体の痛みだけではなく心も軽くなったという声も実際に聞いています。

保健師の方々の一つの武器として、ポケットセラピストが役立っていることが分かりました。より活用いただくために課題などがありましたら、教えてください。

津田:フィジカル・メンタルの両面かつハイリスクとポピュレーションの間にいる、病院の受診までには至らない方々へもアプローチできることに魅力を感じています。
一方で、そのような方々は利用の腰が重く、チラシ等を見てもなかなか登録が進まない印象があります。もっと利用の背中を押してあげられるような告知方法などの工夫が必要だと思っています。

山本:加入者の方々から「自分に合ったストレッチメニューは大変役に立った」「医療職との面談で無理なく楽しく続けられるストレッチを教えてもらい、リマインドもあるので継続しやすい」などの嬉しいお声をいただくことが本当に多く、一度体験すると必ず価値を感じていただいています。しかし、登録するまでのハードルが高く、いかに登録してもらうかが課題だと感じています。その解決手段の一つとして、AI姿勢健診を取り入れています。

若年層や無関心層の興味を引き出す
手軽で効果的な「AI姿勢健診」とは

AI姿勢健診の開催の背景を詳しく教えてください。

山本:きっかけは私たち健保スタッフが実際にAI姿勢健診を体験し、その際に「面白い!これだったら保健事業に馴染みがない若年層や無関心層の方々にも興味を持っていただけるのでは?」と感じたことです。

集団健診時にイベントとして同時開催を企画し、健診の動線の中にAI姿勢健診を組み込むことで、多くの方々に参加・興味を持っていただくための工夫もしています。実際に参加者の間でコミュニケーションも生まれ、皆さんが楽しんで参加している姿を見て嬉しく思いました。

就業時間内​​に、そして、自分の健康に関心を持つ健診日にで実施することで参加しやすく、健康が「自分ごと化」していき、リテラシー向上にも繋がると手応えを感じています。特に、事業所の経営者が自らすすんで参加してくださると従業員のモチベーションが上がるので、健康施策はトップの参加やメッセージが大事であることも痛感しています。

AI姿勢健診の効果や評価しているポイントを教えてください。

清水:椅子と机、全身をスマホで撮る撮影場所があれば、広いスペースがなくても実施できるところが魅力です。撮影後に医療職の方から受ける説明も大変好評でした。

山本:AI姿勢健診は撮影が1分以内で終わるので忙しい方にもサクッと受けていただけます。実施するだけのイベントが多い中、受けた後に結果がすぐ分かることや、希望者はその場で医療職からのアドバイス・相談が可能なことも大変人気が高い理由です。

結果に応じて、個別で医療職によるおすすめの運動方法や職場や在宅時に簡単にできるストレッチを教えていただけることは、セルフケアにも繋がると考えています。もちろん、これらをきっかけにポケットセラピストの登録・利用を始める方も多くいらっしゃいます。

内田洋行さま_導入事例記事

ポケットセラピストにとどまらない支援に期待
二人三脚で従業員の健康増進に挑む

ポケットセラピストにとどまらない支援に期待
二人三脚で従業員の健康増進に挑む

津田:以前、プレゼンティーズムについて、健康関連コストはアブセンティーズムよりプレゼンティーズムの方が圧倒的に高いというデータをご説明いただきました。それについて、事業主がより当事者意識をもたれ、取り組んでいただけるよう、エビデンスを踏まえた資料の活用などアプローチ方法を一緒に検討いただきたいです。

山本:高齢従業員向けのロコモ・フレイルに関して強化していく必要があると感じています。高齢従業員のみを対象とするのではなく、若い方々と共に参加できるような企画をご提案いただけると幸いです。

舟久保:バックテックの顧問である産業医科大学の森先生、永田先生らとバックテックとの共同研究に関して、積極的に情報提供いただけると助かります。その情報を各事業所や従業員にお知らせする際には、噛み砕いて説明する必要があるので、その手段も一緒に検討したいと考えています。2022年には、私が所属する日本運動器疼痛学会がPfizer社の慢性痛教育助成事業に採択されて作成した「慢性痛予防マニュアル」をダウンロードできるサイトを立ち上げました。産業医科大学の永田先生、バックテックの福谷社長にも共同研究に加わっていただきました。どなたでも無料でダウンロードできますので、ぜひ全国の皆さまにご活用いただきたいです。

また、重症化予防の接点としてポケットセラピストの理学療法士・柔道整復師などの医療職はとても重要です。非医療職の方にはあまり知られていませんが、病院における糖尿病のリハビリテーションでは理学療法士が運動療法を行っています。特定保健指導における食事療法は管理栄養士が行いますが、運動面のアドバイスはどうしても簡単なものとなってしまいます。運動療法の面でもコラボできたらと思っています。

様々な役割・立場から貴重なお話をいただきました。引き続き、あらゆるテーマでお役に立てるよう尽力してまいります。皆さま、お時間いただきありがとうございました!

こちらの事例も、
あわせて読まれています。