従業員のアブセンティーイズムとは?【原因と解決策を解説】

アブセンティーイズムとは、従業員が病気やメンタル不調などにより長期の欠勤や休職状態にあることを指します。近年、働く人の健康問題への関心が高まる中でこの言葉が注目されています。例えばメンタルヘルス不調による長期休職者は増加傾向にあり、厚生労働省の調査では「直近1年でメンタル不調で1か月以上の休業または退職者がいた事業所」が全体の13.5%と報告されています [1]。アブセンティーイズムは企業にとって生産性の損失や人材流出につながり、無視できない経営課題です。本記事では、このアブセンティーイズムの原因と影響、そして早期検知方法や効果的な対策について、信頼できるデータや事例を交えながら解説します。健康経営*の推進を目指す企業担当者の方は、ぜひ実務にお役立てください。
健康経営:従業員の健康管理を経営的視点で考え、戦略的に実践すること。従業員の健康増進が企業の生産性向上や業績改善につながるとの考えに基づく(経済産業省による定義)。

アブセンティーイズムの課題(定義や背景とは?)

アブセンティーイズムの定義:企業文脈では、従業員が何らかの心身の不調によって勤務できない状態を指します。遅刻や早退、病気欠勤、長期休職など、健康上の理由で仕事を休んでいる状況はすべてアブセンティーイズムに含まれます。対になる概念としてプレゼンティーイズム(出勤しているが健康問題で生産性が低下している状態)がありますが、アブセンティーイズムは実際に休んでいるため表面化しやすい損失である点が特徴です。一人でも長期欠勤者が出ればその人の業務が止まり、チーム全体の業務負荷が増すなどの影響が避けられません。

発生の背景・社会的要因:アブセンティーイズムの背後には様々な要因があります。大きく分けると、身体的な健康問題(例:ケガ、慢性疾患、感染症など)と精神的な健康問題(例:うつ病、不安障害、燃え尽き症候群など)です。近年は特にメンタルヘルス不調による休職が社会課題となっており、職場のストレスや長時間労働による精神疾患が欠勤の大きな原因となっています。実際、前述の厚労省調査でもメンタル不調による長期休職者がいた企業割合は前年比+0.2増と悪化しています[1]。また日本の労働人口の高齢化により、生活習慣病など慢性的な病気で長期療養が必要になるケースも増えつつあります。さらに、近年の感染症流行(インフルエンザや新型コロナウイルスなど)も一時的に大量の病欠者を生み出し、企業活動に大きな影響を及ぼしました。このように従業員の健康リスクが高まる環境では、放置すればアブセンティーイズムが顕在化しやすくなるため、企業は予防と対応策を講じる必要性が高まっています。

🔗 プレゼンティーズムについては、こちらの記事で解説

アブセンティーイズムが企業に与える影響

アブセンティーイズムが発生すると、企業はさまざまな面で損失を被ります。ここでは生産性コスト安全性の観点から具体的な影響を見てみましょう。

  • 生産性の低下・業務への支障:欠勤者が出るとその人の担当業務が滞り、納期遅延やサービス低下につながります。他の従業員が急遽カバーに入れば、その分自身の通常業務が圧迫され、全体として効率が落ちてしまいます。特に少人数の部署では一人欠けただけでも生産性に大きな穴が空き、プロジェクトの遅延など顕著な影響を及ぼします。これは業務量のシェアだけでなく、周囲の社員のモチベーション低下士気(モラール)の低下も招きかねません。頻繁な人手不足状態が続くと「また誰かの欠勤をカバーしなければ」というストレスが募り、職場全体のパフォーマンス悪化につながります。
  • コストの増加(経済的損失):従業員の病欠や休職は企業に直接・間接のコストをもたらします。直接的には有給病気休暇の支払い代替要員の手配コスト、欠勤中の社会保険料負担などがあります。加えて、欠員補充のための一時的な残業増による割増人件費など間接コストも発生します。厚生労働省のガイドラインによれば、企業の健康関連コストの内訳を見るとアブセンティーイズムによるコストは全体の4.4%に上り、見えにくいプレゼンティーイズム(出勤しているが低生産な状態)の損失77.9%と合わせると大きな割合を占めることが分かっています[2]。一見4~5%程度と小さいように思えるかもしれませんが、これは企業全体のコスト割合であり、金額に直せば1人当たり年間数万円規模の損失になります。たとえば従業員1000人規模の企業なら、欠勤に伴う損失が年間数千万円に達する計算です。さらに将来的な人材離脱(退職)に至れば採用・育成コストなどより大きな損失となります。
  • 安全性・リスクの低下:現場作業や製造業、運輸業などでは、人手不足や交代要員の緊急投入が職場の安全リスクを高める可能性があります。熟練した担当者が不在になることで、代わりに作業する人は普段その業務に慣れておらずヒューマンエラーが起きやすくなります。また他の従業員が無理な残業や慣れない作業をこなすことで疲労が蓄積し、労働災害や事故のリスクが増加します。例えば機械操作や運転業務では、担当者の欠勤により急遽別の社員が対応した結果、安全確認の抜け漏れや操作ミスが発生する可能性があります。このように、アブセンティーイズムは**企業の安全管理面でもコスト増(事故対応や保険料上昇など)**につながりかねず、看過できません。

以上のように、アブセンティーイズムは企業活動に多面的な悪影響を及ぼします。特に生産性とコストの損失は顕著で、社員の健康問題を放置すると業績にも跳ね返ってくることがデータから示されています[2]。健康で意欲的に働ける社員が減れば、競争力の低下にも直結します。

アブセンティーイズムの検知方法(早期発見のポイント)

アブセンティーイズムを未然に防ぎ重症化させないためには、早期に兆候を察知して対処することが重要です。企業が活用できる代表的な検知方法をいくつか紹介します。

  • 勤怠データの分析:日々の出退勤記録や有給取得状況から、異常なパターンがないか確認します。遅刻や早退の頻度増加短期間の病欠の繰り返しなどは要注意サインです。社員の心身の不調は「勤怠の乱れ」に表れやすく、うつ病などの場合は出勤状況が不安定になる傾向があります。月に何度も欠勤が発生したり、特定社員の残業急減や有給消化が増えるといった変化も、モチベーション低下や健康問題の予兆かもしれません。こうした勤怠情報を人事部門や産業医と共有し、一定の基準を超えた場合にフォローアップ面談を実施するなどの体制を整えておくと早期介入が可能になります。
  • ストレスチェックや健康サーベイの活用:従業員への定期的な健康アンケート調査も有効です。日本では年1回の「ストレスチェック制度」(従業員50人以上の事業所で義務)があり、職場ごとの高ストレス者の割合や個人のストレス度合いを把握できます。高ストレスと判定された従業員には産業医による面談を実施し、必要に応じて休職や配置転換など早めの対処が可能です。また経済産業省のガイドラインでも、アブセンティーイズムを正確に測定・把握するには**従業員へのアンケート(過去1年の自身の病気欠勤日数を自己申告してもらう)**が有用だとされています [3]。通常の勤怠記録だけでは有給休暇を病気に充てた場合など見逃すケースもあるため、定期的な健康サーベイによって実態を把握しましょう。社員の疲労度や睡眠状況、職場満足度などを問うアンケートを実施し、不調リスクの高い部署や個人をピックアップすることが大切です。
  • ウェアラブルデバイス等によるモニタリング:近年、社員の同意を得た上でスマートウォッチや活動量計を健康管理に役立てる企業も現れてきました。ウェアラブルデバイスを用いれば、心拍数や睡眠時間、歩数など日々の健康データを収集できます。例えば社員に睡眠計測機能付きのデバイスを配布し、蓄積された睡眠不足データと勤怠記録を組み合わせて分析することで、慢性的な疲労蓄積による欠勤リスクを早期に察知することも可能です。ただしプライバシーへの配慮が重要であり、データ活用にあたっては本人の同意と情報管理の徹底が不可欠です。ウェアラブル以外にも、定期健康診断の結果データやメンタルヘルス相談窓口の利用状況など、社内の様々な健康関連データを統合的にモニタリングすることで不調の芽を早めに発見できます。

以上のような方法を組み合わせて、企業はアブセンティーイズムの兆候を見逃さない仕組みを構築することが重要です。ポイントは「普段と異なる変化」に注目することです。勤怠や健康状態の急な悪化サインを検知したら、上司や人事担当者が声掛けを行い、必要に応じて産業医面談やカウンセリングを案内するなど早期対応につなげるフローを定めておきましょう。

アブセンティーイズムへの対策(企業の施策とセルフケア)

アブセンティーイズムを防止し、従業員が安心して働ける環境を作るには、企業側の制度・施策従業員自身のセルフケアの両面からアプローチすることが大切です。ここでは企業が講じるべき対策と、従業員への働きかけ(セルフケア支援)を紹介します。

企業による主な対策

  • メンタルヘルス対策の強化:職場のメンタル不調を予防するための包括的な施策を導入します。具体的には、定期的なストレスチェック実施と結果に基づく職場環境の評価・改善、産業医やカウンセラーによるメンタルヘルス相談窓口の設置、管理職向けのメンタルヘルス研修(ラインケア研修)などが有効です。社員が早めに相談・ケアできる体制を整えることで、軽度の不調の段階で適切に対処し、深刻化して長期休職に至るのを防ぎます。また、部署内でハラスメントが起きていないかチェックする職場風土の改善も重要です。職場の人間関係のストレスを減らし、安心して働ける雰囲気づくりに努めましょう。
  • 勤務制度の柔軟化(働き方の見直し):社員が無理なく働き続けられる制度設計もアブセンティーイズム対策には欠かせません。例えば、フレックスタイム制やテレワーク制度の導入により、体調に合わせて勤務時間や場所を調整できるようにします。朝起きられないほど体調が悪い日は無理に出社させず在宅勤務を認めたり、通院やリハビリが必要な社員には柔軟に勤務スケジュールを組めるようにするなどの配慮が考えられます。また、有給休暇を取得しやすい職場文化を醸成し、症状が軽いうちに休養を取れるよう推奨することも大切です。「休みにくさ」から無理を重ねて重篤化し、結果的に長期欠勤するケースを防ぐため、会社として計画的な休暇取得推進リフレッシュ休暇制度を設けるのも有効でしょう。
  • 健康増進プログラムの提供:従業員の心身の健康度を底上げするため、会社主導で様々な健康支援策を講じます。例えば、運動機会の提供(社内フィットネス施設の利用補助やオンライン運動プログラムの実施)、食生活改善(社員食堂で栄養バランスの良いメニュー提供、栄養士による健康相談)、睡眠改善(睡眠セミナー開催や勤務間インターバル制度導入)などです。研究によれば、社員の十分な睡眠や定期的な運動習慣はメンタルヘルス関連の欠勤率低下と有意に関連していることが示されています[4]。例えば順天堂大学の大規模調査では、「定期的な運動習慣のある社員」の割合が1%増えるごとにメンタル不調による欠勤率が0.005%減少することが報告されました[4]。これはわずかな数字に見えますが、社員全体の健康度を底上げする施策が欠勤削減につながるエビデンスです。企業として運動や睡眠といった生活習慣の改善を支援することは、長期的に見てアブセンティーイズム防止に寄与すると期待できます。
  • 職場環境の整備と働きがい向上:社員が働きやすくやりがいを感じる職場を作ることも、欠勤抑制に効果があります。具体的には、過重労働を是正する適切な人員配置と業務量管理、快適な作業環境(騒音・温度・照明などの改善)、公平で風通しの良い企業文化の醸成などが重要です。上司が日頃から部下の健康状態に気を配り、小さな変化にも声をかけるラインケアの推進も有効でしょう。また、エンゲージメント(従業員の仕事に対する熱意と愛着)を高める施策も欠勤率低下につながります。実際に、ある病院では看護師の意欲向上を目的としたリーダーシップ施策を5か月間実施した結果、欠勤件数が27.5%も減少しました[5]。このように、社員のモチベーションアップや職場満足度向上につながる取組みは燃え尽き防止にもなり、結果的に健康維持と勤怠安定につながります。
  • 休職者のフォローと職場復帰支援:万一長期休職者が発生した場合も、適切なフォローにより早期復帰と再発防止を図ります。休職中は定期的に産業医や人事担当者が面談を行い、社員の状態を把握して主治医とも情報共有します。復職の際にはリハビリ出勤制度(最初は短時間勤務から始め徐々に通常勤務に戻す)を活用し、無理のない復帰プランを立てます。また、復職後しばらくは周囲の同僚とも連携してサポートし、業務量や残業時間に配慮するなど再発予防プログラムを実施します。必要に応じて配置転換や職務内容の変更も検討し、その人が働き続けられる環境調整を行います。こうした**「手厚い復職支援」**は社員の安心感につながり、休職への心理的ハードルを下げることで早めに休んで回復する行動を促す効果も期待できます。結果として深刻化したケースを減らし、長期離脱を防ぐことにもつながります。

従業員自身ができるセルフケア

企業側の取り組みと並行して、**従業員一人ひとりが自身の健康管理に主体的に取り組む(セルフケア)**ことも不可欠です。厚生労働省の「心の健康づくり計画」においても、セルフケアは職場のメンタルヘルス対策の“四つのケア”の基本の一つと位置付けられています [6]。社員が自らの不調に早く気づき対処できるよう、次のようなセルフケアを推奨しましょう。

  • 生活リズムの維持:十分な睡眠(1日7時間程度を目安)とバランスの良い食事、適度な運動習慣を心がけます。生活習慣の乱れは免疫力低下やメンタル不調に直結します。就寝前のスマホ・PC使用を控え睡眠の質を上げる、エレベーターではなく階段を使う・通勤時に一駅歩くなど日常に運動を取り入れる、といった工夫を促します。小さな改善の積み重ねが欠勤しにくい健康な体づくりにつながります。
  • ストレスの自己チェックと発散:日々の自分の気分やストレス度合いに注意を払い、「なんだか最近眠れない」「些細なことでイライラしがち」などの兆候に気付いたら放置しないことが大切です。社員にはストレスチェックの結果フィードバックやメンタルヘルス研修などを通じて、自分のストレスサインを把握する方法を伝えます。そして適度に休息を取る、信頼できる同僚や友人に相談する、趣味の時間を持つなど上手にストレスを発散する方法を実践してもらいましょう。また、社内のEAP(従業員支援プログラム)やカウンセリング窓口を周知し、「悩んだら専門家に話してもいい」という風土を作ることも有効です。
  • 無理をしない勇気と早めの受診:真面目な従業員ほど体調不良を押して出社し、結果的に病気を悪化させ長期離脱するケースが見られます。社員自身に「体調が悪いときは遠慮なく休む」ことの大切さを伝えましょう。会社として病気休暇を取りやすい環境を用意することはもちろんですが、最終的には本人が無理をしない判断をすることが重要です。風邪の初期症状やメンタル不調の兆候を感じたら、早めに医療機関を受診し適切な治療や休養を取るよう勧めます。初期対応が早ければ数日の静養で済むものを、無理して働き続けた結果数か月の休職に至るといった事態を防げます。自分の健康第一に対処することが、長期的には職場への貢献にもなると啓発しましょう。
  • 職場の制度や支援策の積極活用:会社が用意している健康増進施策(例:運動プログラムやヨガ教室、禁煙支援、メンタルヘルス相談など)や有給休暇制度は積極的に利用するよう促します。特に年次有給休暇は毎年一定日数を取得しリフレッシュすることが推奨されます。「有給を取得するのは悪いことではなく、心身の健康管理のために必要なこと」というメッセージを発信し、休むときはしっかり休むメリハリをつけるよう促進します。本人が会社の支援策を上手に活用してセルフケアに努めることが、結果的にアブセンティーイズムの予防につながるのです。

対策による効果・エビデンス紹介

ここでは、実際にアブセンティーイズム対策が功を奏したデータや事例をいくつか紹介します。科学的エビデンスに裏付けられた取り組みは、企業内でも説得力をもって推進しやすくなります。

  • 介入プログラムによる欠勤率の改善(研究データ):最新の研究では、職場で実施する健康介入が欠勤率の改善に有効であることが示されています。例えば2020年の系統的レビュー研究では、2000~2017年に行われた計47件のランダム化比較試験(RCT)を分析し、職場介入の効果を検証しました[7]。その結果、個別カウンセリングを中心とした10回未満のセッションで構成されるプログラムが最も欠勤日数の削減効果を示し、全体としても介入群で有意に欠勤が減少する傾向が確認されました 。このレビューは「職場は欠勤対策の場として有望であり、短期間で集中的なカウンセリング介入が特に効果的」と結論づけています。つまり、メンタルヘルス相談やフィットネス指導などを定期的に行うプログラムには科学的な裏付けがあると言えます。
  • エンゲージメント向上施策による欠勤減少(企業事例):あるコミュニティ病院の一般病棟では、看護師の欠勤の多さに対処するため、2018年に従業員エンゲージメント向上プログラムを導入しました 。具体的にはマズローの欲求段階説に基づく承認や成長機会の提供などリーダー主導の施策を5か月間実施し、その前後で欠勤日数を比較しています。その結果、**半年あたりの欠勤件数が介入前の51件から介入後は37件に減少(27.5%の改善)**しました[5]。担当者は「バーンアウト(燃え尽き)を防ぎ仕事に意欲を持ってもらうことが欠勤減少につながった」と分析しています。この事例は、職場の人間関係やリーダーシップ改善といったソフト面の施策でも十分に効果が得られることを示しています。
  • 健康経営の推進による長期欠勤の削減(国内企業の成果):日本企業でも、健康経営の一環として様々な施策を講じた結果、欠勤や休職の大幅な削減に成功した例があります。経済産業省の発表資料によれば、ある大手企業ではメンタルヘルス対策強化や働き方改革など複数の対策を継続した結果、年間のメンタル不調による休業延べ日数が2014年度の12,251日から2018年度には7,019日へと約4割減少しました[8] 。一時は大きな課題だった長期休職者の数が着実に減り、社員の定着率向上と生産性改善という成果も得ています。このように総合的な健康施策の推進は中長期的に確実な効果をもたらすことが実例から示唆されます。

これらのデータや事例は、アブセンティーイズム対策が**「投資に値する取り組み」**であることを物語っています。根本原因に合わせた適切な介入を行えば、欠勤率の改善や社員の健康度向上というリターンが得られるのです。もちろん組織風土や業種によって最適な策は異なりますが、自社の課題に合った対策を選び、効果検証しながら改善を続けることが重要です。

まとめ

アブセンティーイズム(従業員の病気欠勤・休職)は、企業の生産性低下やコスト増大を招く重大な課題です。その背景にはメンタルヘルス不調の増加や生活習慣病の蔓延など現代社会特有の問題があり、決して一部の企業だけの悩みではありません。本記事では原因から影響、検知方法、対策まで包括的に見てきましたが、要点を整理すると以下のとおりです。

  • アブセンティーイズムとは何か:従業員が心身の不調で勤務できない状態全般を指し、遅刻・欠勤・休職などの形で現れる。プレゼンティーイズム(出勤はしているが低調)と対になる概念で、後者よりも表面化しやすい。近年はメンタル不調による長期休職者が増えている[1]。
  • 企業への具体的な影響:人手不足による業務停滞と生産性ロス、代替要員や残業増による人件費コスト、安全性低下による事故リスクなど多岐にわたる。健康関連コスト全体に占める欠勤損失は4~5%程度との報告もある[2]が、企業規模によっては年数千万円にのぼる可能性がある。
  • 早期発見の方法:勤怠データを活用した異常傾向のモニタリング(欠勤頻度や遅刻の増加など)、ストレスチェックや健康アンケートによる主観的不調の把握[3]、ウェアラブルデバイス等による客観的健康データのモニタリングなどを組み合わせ、兆候を見逃さない仕組みづくりが重要。
  • 有効な対策:メンタルヘルス対策(相談体制や職場環境改善)、働き方の柔軟化(テレワーク・時差出勤で無理をさせない)、健康増進支援(運動・睡眠改善プログラム)による社員の健康底上げ、職場のエンゲージメント向上策(やりがい・人間関係の改善)、そして休職者発生時の丁寧な復職支援など、多角的な施策が有効。社員自身のセルフケア意識啓発も不可欠であり、企業と従業員の協働で健康課題に取り組む姿勢が求められる。
  • エビデンスと効果:短期集中のカウンセリング介入が欠勤を有意に減らしたとの研究結果があるほか、職場の取組みにより欠勤率が2~3割改善した事例も報告されています[5]。総合的な健康経営の推進が長期欠勤日数の削減につながった企業例もあり[8]、対策は十分に効果が期待できます。重要なのは、自社の課題に合った施策を選択しPDCAを回して継続することです。

ポケットセラピストは、理学療法士や臨床心理士といった専門の知識をもつセラピスト(医療職)の面談を、従業員の皆様に365日受けていただくことができるため、心と身体の不調のどちらの対策にも繋げることができます。また、相談しくい、あるいは自覚症状のないメンタルヘルス不調に対しても、”身体の痛み”をきっかけに相談から改善指導に繋げることができるためアブセーンティーズム対策、プレゼンティーズム対策にも活用いただけます。


アブセンティーズム対策に、まずは実態把握と対策立案

企業の人事・労務担当者は、アブセンティーイズムを**「従業員と企業双方に損失をもたらす共通の敵」と捉え、積極的に対策を講じる必要があります。ただ闇雲に働かせるのではなく、社員の健康状態に目を向け、必要な休養や支援を提供することが結果的に組織の利益につながるという発想が大切です。ぜひ本記事の内容を参考に、社内での実態把握と対策立案に役立ててください。健康で生き生きと働ける職場づくりを進めることで、欠勤ゼロとはいかなくともアブセンティーイズムの影響を最小限に抑えること**は十分可能です。社員が安心して能力を発揮できる環境を整え、持続的な企業成長につなげていきましょう。


引用・注釈

 [1] 厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r05-46-50_gaikyo.pdf

 [2] 厚生労働省『コラボヘルスガイドライン』(2017年)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000171483.pdf

[3] 経済産業局「企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版)」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkokeiei-guidebook2804.pdf

 [4] Yuichiro Yano et al., “The association between employee lifestyles and the rates of mental health-related absenteeism and turnover in Japanese companies.” Epidemiology and Health. 46, e2024021 (2024). PMID: 39118545

 [5] King, A.T. et al., “Employee engagement and absenteeism: A step towards improving patient care.” Nursing Forum. 55(3):356-361 (2020) PMID: 32003454

[6] 厚生労働省「心の健康づくり計画」
https://www.mhlw.go.jp/content/000560416.pdf

 [7] Tarro, L. et al., “Effectiveness of Workplace Interventions for Improving Absenteeism, Productivity, and Work Ability of Employees: A Systematic Review and Meta-Analysis of RCTs.” Int J Environ Res Public Health. 17(6):1901 (2020). PMID: 32183392

[8] 経済産業省「健康経営 先進企業事例集」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/008_s05_00.pdf

執筆者のプロフィール

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ポケットセラピスト編集者

企業として介入しづらいメンタルヘルスの不調に対して、カラダの痛みや悩みからアプローチ。医学的根拠に基づいた、独自性の高いサービス『ポケットセラピスト』のマガジン編集担当です。 健康経営の取り組みに役立つ最新の情報をお届けします。