【高ストレス者対策】未病予防と早期発見に焦点を当てた対策

本記事では、法定のストレスチェック実施と高ストレス者への面談勧奨だけでは解決できない、繰り返される休職・離職高ストレス者の増加といった組織課題に対し、日々のデータ活用による早期発見と、職場の環境改善、適切な外部サービス活用による未病予防に焦点を当てた具体的な戦略をご提案します。

なぜ、面談勧奨だけでは組織課題は解決しないのか?

多くの企業がストレスチェックを実施していますが、その後の対応が「高ストレス者への面談勧奨」という個への対処(ハイリスクアプローチ)に偏りがちです。このアプローチでは、以下のような課題は解決しません。

  1. 早期発見の限界(予備軍・過少申告): ストレスチェックは自己申告制であるため、自身の不調に気づいていない「予備軍」や、人事評価への影響を恐れて意図的に申告を控える「過少申告者」を掬い上げることができません。結果として、本当に支援が必要な人が高ストレス者判定から漏れてしまうリスクがあります。
  2. 本質的な課題解決の欠如: 面談勧奨という個への対処に終始し、ストレスの原因となっている職場環境改善や予防の取り組みができていないと、不調者が回復して職場に戻ってもストレス要因が残っているため、再休職のリスクが高まります。また、新たな不調者が次々と発生し、「イタチごっこ」となってしまい、本質的な課題解決には至りません。

今すぐできる2つの早期発見方法

不調が深刻化する前の「未病」段階で介入するためには、従業員の発する小さなサインを客観的なデータで捉える仕組みが必要です。特に今すぐ活用できる既存のデータ(勤怠、ストレスチェック結果など)からすぐに取り組めるような方法をお伝えします。

1. 勤怠データを活用した早期発見

人事・労務担当者が日常的にアクセスできる勤怠データは、最も客観的な早期アラートです。

  • 「負のサイン」の検出:
    • 遅刻・早退・欠勤の頻度増加(特に月曜日の頻度)
    • 残業時間の急増(業務負荷の上昇)または急減(意欲・集中力の低下)
    • 有給休暇の不自然な取得(体調不良や心身の疲労蓄積)

2. ストレスチェックのスコアを活用した早期発見

ストレスチェックの結果を「高ストレス判定」の有無だけで判断せず、「睡眠課題」「身体愁訴」の項目に着目します。

  • 睡眠課題のスコア活用: 「寝つきが悪い」「夜中に目が覚める」などの睡眠関連スコアが高い部署や個人は、精神的な疲労や緊張が続いている状態を示している可能性があり、メンタル不調への移行リスクが高いと判断できます。
  • 身体愁訴項目を活用した早期発見: 「胃腸の調子が悪い」「肩こりがひどい」「頭痛がする」といった身体の不調(身体愁訴)は、「助けて」と言えない社員のストレスが身体に現れたサインです。このスコアが高い社員や部署は、環境要因による慢性的な緊張状態にある可能性が高いです。

早期介入/未病予防①職場環境への介入

早期発見で得られたデータを基に、ストレスの「発生源」である職場環境に介入し、組織的な未病予防に取り組みます。

1. 職場環境改善のPDCAサイクル

ストレスチェックの集団分析結果(特に「仕事の量的負担」「コントロール度」「上司・同僚のサポート」のスコア)や、身体愁訴スコアの高い部署をターゲットに、現場の管理職と社員を巻き込んだ改善活動を実践します。

ステップ実施内容目的
P (Plan)具体的な課題と目標の設定(例:「胃腸の不調が多い部署で休憩時間の確保をルール化する」)現場のストレス要因に特化した介入
D (Do)施策の実行(現場で実践可能な小さな改善策からスタート)実行可能性の高い施策の試行
C (Check)効果測定(残業時間の変化、簡易アンケートでの満足度、次年度のスコアの変化)改善効果の客観的な評価
A (Action)横展開または見直し(効果のあった施策を全社に展開)継続的な改善文化の醸成

2. 「仕事の資源」を高める介入

ストレス要因(デマンド)を減らすだけでなく、社員が困難を乗り越えるための**「仕事の資源(リソース)」**を高めます。

  • 裁量権(コントロール)の付与: 業務の進め方やスケジュール調整の裁量権を可能な範囲で社員に委譲し、自己効力感を高めます。
  • 相互支援の仕組みづくり: チーム内での情報共有や助け合いを促進し、心理的安全性の高い環境を築きます。

早期介入/未病予防②多層的なサポート体制

未病予防の実効性を高めるには、現場のラインケア能力向上と、専門的な外部サービスへの円滑な接続が不可欠です。

1. 他職種連携によるサポート

  • 管理職研修の強化: 管理職は「治療者」ではなく「つなぎ役」として、部下の変化を察知できるよう周知・教育を行います。特にデリケートな話題チーム内の問題は介入のハードルが高い場合があるため客観的な事実に基づいた記録と、対応部署や産業保健スタッフへの橋渡しに徹するよう教育します。
  • 産業保健スタッフの戦略的関与: 産業医・保健師は、個別の面談だけでなく、勤怠リスクの高い社員、身体愁訴スコアの高い社員を事前に把握し、管理職と連携して戦略的に面談勧奨や部署への介入を行います。

2. EAPや外部サービスの活用

社員が抱える課題の性質に応じて、適切かつ専門性の高い外部サービスへのアクセスを用意します。

  • EAP(従業員支援プログラム)の活用:
    • メンタルヘルスの専門相談はもちろん、ハラスメント、人間関係、法律、家計など、幅広い課題に対応できる外部EAP窓口を周知します。匿名性と守秘性の担保を強調し、利用への心理的ハードルを下げます。
  • 健康増進サービス等の活用:
    • ストレスチェックで特定された身体愁訴スコアの高い社員や、メンタル相談に抵抗がある社員に対し、心身のケアにつながるサービスの利用を推奨します。これは、メンタル不調が深刻化する前に、自律神経の乱れや身体の緊張を和らげるための「未病予防」として機能します。

まとめ

企業が持続的な成長を実現するためには、「高ストレス者」を減らすこと以上に、「未病」の状態にある社員をゼロに近づける予防的な健康経営が必要です。

  • 早期発見: 勤怠データや身体愁訴スコアを早期アラートとして活用する。
  • 未病予防: データに基づき職場環境を改善し、ストレスの発生源を断つ。
  • 多層的支援: ラインケアの徹底と、EAP・健康管理サービスなどを使い分け、心理・身体の両面からサポートする。

これらの戦略を通じて、社員のウェルビーイングを高め、活力ある職場を築き上げていきましょう。

ポケットセラピストは、メンタルヘルス不調の早期発見・早期介入のご支援を行なっています。
ぜひお気軽に、資料請求・お問い合わせください。

執筆者のプロフィール

アバター

ポケットセラピスト編集者

企業として介入しづらいメンタルヘルスの不調に対して、カラダの痛みや悩みからアプローチ。医学的根拠に基づいた、独自性の高いサービス『ポケットセラピスト』のマガジン編集担当です。 健康経営の取り組みに役立つ最新の情報をお届けします。