なぜ製造業でメンタルヘルス不調が多い?【環境が与える影響を解説】
国内の製造業では、従業員のメンタルヘルス不調が深刻な問題となっています。騒音や危険作業、長時間労働など過酷な職場環境や、シフト勤務による不規則な生活リズム、さらに品質管理・納期厳守というプレッシャーが重なり、従業員に大きな心理的負担を与えています。実際、製造業は他業種と比べてもストレス度が高い業種であり、メンタルヘルス不調による長期休職や離職者の割合が全産業平均を上回る状況です。
本記事では、こうした製造業特有のメンタルヘルス不調要因を詳しく解説し、企業が導入できる効果的な対策について紹介します。
目次
製造業におけるメンタルヘルス不調の、3つの要因
令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、製造業では、メンタルヘルス不調者(連続1か月以上の休職または退職者)が発生した事業所の割合は18.6%で、前年(令和4年)の16.8%から増加しています。この18.6%という値は全業種平均の13.5%を上回っています。[1]
このように、製造業はメンタルヘルス不調者割合が高い業種であり、その背景には以下のような複数の要因が絡んでいます。

身体的ストレスが積み上がりやすい職場環境
製造業では、騒音、高温、寒冷、粉塵、化学物質など、身体に負荷をかける環境下で働く場面が少なくありません。
これらは一見「肉体的ストレス」のように見えますが、持続的に続くことで自律神経の乱れを引き起こし、メンタル不調のリスクを高めます。
特に夏場の暑熱作業、冬場の寒冷作業は、肉体疲労と心理的疲労が同時に蓄積しやすく、不眠や集中力低下、情緒不安定などにつながるケースも多く報告されています。
製造業特有の心理的要因
ライン作業は「単純作業」ではありますが、実際には高い集中力が長時間求められます。「1つのミスが重大な事故につながる」「品質不良になる」というプレッシャーは、日々の精神的負荷となり、疲労蓄積に直結します。
また、単調作業は自己効力感(自分は価値を発揮できているという実感)を得にくく、職務満足度の低下にもつながりやすい側面があります。
交代勤務による生活リズムの乱れ
シフト勤務は一般勤務に比べてうつ病や不安障害のリスク増加と関連しており、あるメタ分析では交代制勤務者は非交代制勤務者より約1.3倍、メンタルヘルス不良を発症しやすいと報告されています [2]。
特に夜勤や早朝勤務などの交代制勤務は睡眠リズムに大きな影響を与え、睡眠の質の低下を招きます。睡眠不足は「メンタル不調の“入り口”」といわれるほど、心理状態に直結する要因です。
また、特に女性の交代勤務者では抑うつリスクが高いことが示され、睡眠不足やホルモンバランスの乱れが深刻な心理的影響を及ぼすと考えられます。

製造業で取り組みたいメンタル不調対策
不調者の早期検知
企業が従業員のメンタルヘルス不調を早期に察知し対策を講じるための代表的な手段として、ストレスチェックの活用があります。
ストレスチェックは、質問票によって心理的負担の程度を検査し、必要に応じて産業医の面接指導を行う制度です。これにより、従業員個々のストレス状態に気づきを促すとともに、職場全体のストレス要因を把握し、適切な改善策の検討が可能となります。

しかしストレスチェックをメンタルヘルス不調対策に繋げるためには、職場全体の改善策や個別のフォローアップの検討が重要です。
睡眠指導・改善プログラムの導入
交代勤務でも質の良い睡眠を確保するための、睡眠改善プログラム、専門職への相談機会の提供が有効です。睡眠の改善には日々の睡眠習慣・生活習慣が重要です。そのため、睡眠セミナーなどの知識をインプットする施策と合わせて、行動変容を促すことのできるプログラムの活用が改善に繋がりやすくなります。
また、相談機会の提供においては、夜間勤務の従業員の場合は日中の相談が難しいため、勤務時間に合わせて早朝や夜間の利用が可能な外部サービスを検討する必要があります。
メンタルヘルス相談窓口の設置
ストレスやメンタルヘルス不調を感じている従業員は、上司や人事担当者に相談しにくいと感じるケースがあります。そういった場合には、専門職に相談ができる外部サービスの導入も有効です。
一方で相談窓口を設置しただけでは、利用されないケースも少なくありません。相談利用のハードルが高くなく、医療職や専門家に相談できるサービスなどを選択する必要があります。
相談窓口の利用率を高めるポイントは、こちらの資料をご覧ください。

まとめ:
製造業での健康施策は、勤務時間や拠点が多岐に渡ることから、改善の取り組みが難しいと感じるケースは少なくありません。
しかし、これらの対策を講じた結果、職場全体のメンタルヘルス指標が改善した事例も報告されています。他社の事例も参考にしながら、できることから改善の取り組みを進めていきましょう。

引用・注釈
[1] 厚生労働省. 「令和6年 労働安全衛生調査(概況)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_kekka-gaiyo01.pdf
[2] Torquati, L. et al. “Shift Work and Poor Mental Health: A Meta-Analysis of Longitudinal Studies.” American Journal of Public Health, 2019. PMID:31536404
厚生労働省. 「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/content/000917251.pdf



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