【健康施策】「利用率が高い相談窓口」の特徴とは?【◯◯◯◯◯を切り口にした新しいアプローチ】
企業のメンタルヘルス不調対策は、今や喫緊の課題です。約7割の労働者が仕事でストレスを抱え(1)、その経済的損失は年間7.6兆円にも上ると言われています(2)。しかし、既存の相談窓口の利用率は低いという課題があります。
本記事では、この大きな課題に対し、メンタルヘルス不調に随伴する「身体の不調」を切り口とした、従業員が利用しやすく、高い効果が期待できる新しいアプローチと、具体的な成功事例をご紹介します。
目次
日本の職場におけるメンタルヘルス不調と生産性の課題
日本の労働者が抱えるストレスの現状と経済的損失
厚生労働省の調査によると、日本の労働者の68.3%が、仕事や職業生活で強い不安、悩み、ストレスを感じた事柄があると回答しています。特に、30代から40代の働き盛り世代で、その割合が最も高くなっています(1)。

メンタルヘルス不調は、企業にとって無視できない経済的な損失に繋がっています。日本全体のメンタル不調による年間の損失額は7.6兆円と試算されており、その大半である7.3兆円は、心身の不調を抱えながら出勤し、生産性が低下している状態(プレゼンティーズム)による損失です(2)。

既存の相談窓口の低い利用率
企業はメンタルヘルス対策として産業医面接や社内外の相談窓口を設けていますが、これらの利用率は決して高くありません。

- ストレスを感じる事柄がある労働者のうち、人事労務担当者への相談は3.9%に留まっています(3)。
- 産業医への相談は1.7%、保健師または看護師への相談は1.5と、医療職への相談も2%未満です。
- 事業場が契約した外部相談窓口への相談に至っては、0.7%と1%未満にとどまっています。
多くの従業員がストレスを抱えているにもかかわらず、企業の提供する専門的なサポートに繋がりにくいことが、社内の相談制度や社外相談サービスなどを活用できていないことが、メンタルヘルス不調対策の大きな課題となっています。
心理的な抵抗感による利用のハードル
従来のメンタルヘルスアプローチは、「心の悩み」を入口とすることが多いため、相談を促された側が「心の病気だと思われた」「人事評価に響くかもしれない」と感じ、利用への心理的な抵抗感に繋がりやすい傾向があります。また、自分で心の不調を認識していない、あるいは認めたくない従業員にとって、カウンセリング予約といった行動に繋がりづらいという問題があります。
高ストレス者の7割が抱える「身体愁訴」
注目すべきは、高ストレス者の6割から8割が、身体愁訴(身体的な不調)を抱えているというデータです。

さらに、うつリスク、身体の痛みの日数、睡眠の質は相互に関連しており、特に身体の痛みとうつリスクは、生産性低下に影響を与えることが実証されています。心の不調と身体の不調は原因を明確に分類できず、両輪での対策が効果的であると言えます。

新しいアプローチの提案:「身体の不調」を切り口にした対策
これらの背景を踏まえ、「身体の不調」を切り口にしたアプローチが効果的です。
反応率が約5倍になる「フィジカル訴求」の力
メンタルヘルス対策の施策を従業員に訴求する際、「カラダの不調改善を切り口にする」と、反応率が約5倍に高まることが分かっています(6)。

メンタルヘルス不調に合併しやすい身体の不調を入口に対策を訴求することで、高ストレス者を含め、従業員の関心を引きやすくなります。
従来の抵抗感を解消するアプローチ
「身体の不調」を切り口にしたアプローチには、従来の「心理カウンセリング」を勧めるアプローチに比べて大きなメリットがあります。

- 身近で相談しやすいテーマ:
「最近肩こりがつらそうだから、相談してみては?」など、客観的で相談しやすいテーマで声かけすることができ、促された側も「健康サポートの一環」として利用を始めやすく、抵抗感が薄れます。 - 心の不調の自覚に関わらず利用しやすい:
身体の不調は自覚を伴いやすく、「心の不調に気づいていない方」や「不調に気づいているが認めたくない方」も利用しやすくなります。 - 早期発見・未然防止に効果的:
心の不調の有無や自覚に関わらず利用が促進されるため、メンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)や早期発見(二次予防)としても効果的です。
ストレスチェックデータの活用

ストレスチェックを行なっている事業所であれば、結果データを活用して、対象者を絞りながら利用促進の案内を出すことが可能です。こうしてストレスチェックの個別データを利用する場合には、具体的な身体愁訴や健康課題に対応した案内をすることで、従業員が「自分ごと化」しやすくなるというメリットもあります。
4. 実例紹介:「身体の不調」切り口のプログラム導入事例
実際に「身体の不調」を切り口にしたプログラムを導入し、成果を上げている企業の事例をご紹介します。
三菱ケミカルグループ株式会社
三菱ケミカルグループでは、ストレスチェックで高ストレス者かつ慢性的な痛み(腰痛・肩こり・頭痛等)を持つ従業員を対象に、「身体的な痛みを緩和することでメンタル不調を予防するプログラム」を導入しています。

利用者において以下のような改善効果が確認されています。
- うつリスクスコア:合計スコアが-2.6点と大幅な改善効果を認められました。
- 自覚症状の程度:肩こり、腰痛、目の疲れ、頭痛の各症状の程度において、医学的に明らかな改善効果を認められました。
プログラムの効果判定レポートのデータは、社外開示資料(Well-being Report)から閲覧できます。
利用されやすい健康施策への転換
「心と身体の両輪の対策」により、不調の一次予防や早期発見に繋がり、結果として労働生産性の向上と企業の経済的損失の低減が期待できます。さらにm相談窓口の利用促進だけでなく、睡眠の課題や年齢による健康課題などの施策も「カラダの不調を切り口」にしたアプローチへの転換が有効です。
従業員が利用しやすく、成果が出る予防対策のアプローチ方法を見直してみてはいかがでしょうか。
参考文献
(1)(3)厚生労働省 令和6年「労働安全衛生調査」
(2)Hara, Koji PhD; Nagata, Tomohisa PhD, et al. The Impact of Productivity Loss From Presenteeism and Absenteeism on Mental Health in Japan Journal of Occupational and Environmental Medicine 67(9):p 699-704, September 2025. | DOI: 10.1097/JOM.0000000000003431


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