従業員のためのヘルスリテラシー向上方法【効果と施策のポイントを解説】
企業の人事・労務担当者にとって、従業員の「ヘルスリテラシー(Health Literacy)」向上は、職場の生産性維持や健康経営推進に欠かせない課題です。ヘルスリテラシーとは「健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力」を指します[1]。現代は情報過多の時代であり、信頼できる健康情報を取捨選択する力が求められています。一方、企業現場ではメンタルヘルス不調、慢性的な痛み(慢性疼痛)、女性特有の健康課題といった問題が顕在化しつつあり、それらは従業員本人のみならず組織全体の活力に影響し、適切な対策が欠如すれば休職やプレゼンティーイズム(疾病就業)、さらには離職を招きかねません。
本記事では、ヘルスリテラシー向上の重要性と、メンタルヘルス不調・慢性疼痛・ジェンダー課題に焦点を当てた具体的な施策について解説します。企業と従業員双方にメリットのあるアプローチを確認し、明日から実践できるポイントを探っていきましょう。
目次
ヘルスリテラシーとは何か?
ヘルスリテラシーとは先述の通り「適切な健康情報を収集・理解し活用する能力」であり、個人が主体的に自分の健康を管理するための基盤となる力です。具体的には、信頼できる情報源から必要な医療・健康情報を入手し、自らの状況に照らして判断・意思決定し、行動に移すプロセスを指します。この力が高まれば、自身の症状やリスクに早めに気付き適切に対処できるため、結果的に重大な病気の予防や重症化防止につながります。例えば、日本医療政策機構の調査ではヘルスリテラシーの高い女性ほどPMSや月経随伴症状時の仕事のパフォーマンスが高いことが報告されています[2]。また企業文脈では、「健康経営(従業員の健康管理を経営的視点で捉え戦略的に取り組む手法)」において社員一人ひとりのヘルスリテラシー向上が最も基礎的な目標に位置付けられており、従業員が適切な知識を身につけ自己管理できるようになることが重視されています。このようにヘルスリテラシーは、個人の健康のみならず組織全体の健康風土を支える重要な概念です。
ヘルスリテラシーが低い場合の企業課題
従業員のヘルスリテラシーが低いと、健康問題の早期発見・対処の遅れやケアの不足を招き、結果的に企業活動にマイナスの影響を及ぼします。
例えば、自身のメンタル不調に気づかなかったり対処法を知らなければ、状態が悪化して長期休職に至るリスクが高まります。また、正しい医療知識が不足していると、痛みや不調を抱えたまま無理に働き続けてしまい(プレゼンティーイズム)、生産性が低下したり症状悪化で結局休職するケースも増えかねません。具体的データからもその影響は明らかです。厚生労働省の調査によれば、「直近1年でメンタル不調で1か月以上の休業または退職者がいた事業所」が全体の13.5%と報告されており[3]、うつ病など精神疾患は休職の主要因の一つとなっています 。
また、慢性的な腰痛や頭痛等を抱える従業員も少なくなく、日本の慢性疼痛有病率は約22.5%(約2,315万人)と推計され、過去半年で平均約10日間の病欠を生じさせています[4]。さらに女性特有の健康課題においても、女性社員の半数が生理痛や更年期などで職場で困難を感じた経験を持つということが報告されています[6]。
これらは企業にとって大きな損失です。特にプレゼンティーイズムによる潜在的損失は深刻で、健康上の不調を抱えた社員一人当たり年間約56万円の生産性損失に相当するとの試算があります[7]。ヘルスリテラシーが低いままでは、こうした問題が見過ごされやすく、結果として休職者の増加や離職率の上昇にもつながりかねません。反対に言えば、ヘルスリテラシーを底上げし適切な対策を講じることで、これら企業課題の予防・軽減が期待できるのです。
メンタルヘルス不調・慢性疼痛・ジェンダー課題とヘルスリテラシーの関連
ヘルスリテラシー向上の具体的メリットを、企業が直面する主要な健康課題ごとに見てみましょう。
1. メンタルヘルス不調: ストレスやうつといったメンタルヘルス不調への対応には、従業員自身と職場全体の両面でメンタルヘルスリテラシーを高めることが重要です。職場のメンタルヘルス対策を効果的にするには、一部の専門担当者だけでなく労働者に対してメンタルヘルスリテラシーを高める施策を行うことが推薦されています[8]。従業員がストレスの兆候やうつ症状を正しく知っていれば、早めにセルフケアを行ったり周囲に相談したりでき、深刻化を防げます。また管理職や同僚も正しい知識を持てば、部下・同僚の不調に気づきやすくなり、声かけや産業医への橋渡しが円滑になるでしょう。ある研究では、メンタルヘルスの不調が企業業績に与える影響を検証したところ、メンタルヘルス休職者比率の上昇は中期的に売上高利益率を低下させる可能性が示されています。ヘルスリテラシー向上によって従業員の助け合い文化や相談しやすい風土が醸成されれば、結果的にメンタル不調による長期離脱者の発生とそれによる業績の低下を抑えることができます。
2. 慢性疼痛(慢性的な痛み): 肩こりや腰痛、頭痛など慢性疼痛を抱える従業員に対しても、ヘルスリテラシーは有効です。痛みの原因や対処法に関する知識を社員が持てば、痛みを悪化させない工夫(例:適切な姿勢・休憩、早めの受診やリハビリ)を取れるようになります。実際に、デンマークの介護施設で行われた研究では、従業員と管理職に痛みの予防・対処法について教育し、上司と話し合いながら職場での対策を立てるというヘルスリテラシー向上介入を実施した結果、介入後に従業員の平均痛みスコアが7%低下し、特に痛みが強かった従業員では12%の痛み軽減がみられました[9]このように、慢性疼痛に対する正しい知識の共有は、痛みによる業務支障の軽減につながります。痛みを抱えたまま無理をして悪化させる従業員を減らし、必要に応じて治療と仕事の両立支援(例:作業負荷軽減やテレワーク活用)につなげるためにも、ヘルスリテラシー向上は欠かせません。
3. ジェンダーに由来する健康課題: 女性特有の健康問題(生理痛、PMS、更年期障害、不妊治療など)や、男性にも起こりうるジェンダー関連の課題(例:男性の受診控えやメンタル不調の表出のしにくさ)にもヘルスリテラシーの観点が重要です。特に女性の健康課題はこれまでタブー視されがちでしたが、近年は企業の関心も高まっています。経済産業省の資料によると、健康経営を推進する企業が最も関心を寄せるテーマに「女性特有の健康問題対策(56%)」が挙げられています[6]。女性社員自身が自分の体調変化や症状に関する知識を深めることはもちろん、周囲の上司・同僚(男女問わず)が正しく理解することも大切です。日本医療政策機構の調査では、ヘルスリテラシーの高い女性ほど業務パフォーマンスが有意に高いことが示されました[6]。またリテラシーの高い女性は、生理不順やPMS、更年期症状に対して市販薬や医療機関受診など適切な対処行動をとる割合が2.8倍高い**とのデータもあります [2]。これは、正しい知識があれば我慢しすぎずにケアや治療を受けられることを意味します。その結果、女性のコンディション悪化を防ぎ、仕事への支障も減らせます。実際、生理痛やPMSによる労働損失は日本全体で年間約4,911億円にもなるとの試算もあり[6]、企業にとって看過できない損失です。ヘルスリテラシー向上を通じて社員が自分の体の声に敏感になり、必要な休養取得や勤務配慮(時差出勤や在宅勤務など)を遠慮なく相談できる環境を整えることは、ジェンダー課題による離職防止や女性活躍推進にも直結します。
企業が実施できる”ヘルスリテラシーを高める”主な施策
ヘルスリテラシー向上のために企業が取り組める施策には様々なものがあります。重要なのは、教育機会の提供と環境・サポート体制の整備を両輪で進めることです。以下に主な施策とポイントを挙げます。
- 従業員教育・研修の実施: 従業員に健康について学ぶ機会を定期的に提供しましょう。内容はメンタルヘルス、運動・食生活と生活習慣病予防、腰痛など筋骨格系のケア、女性の健康(生理・妊娠・更年期)など多岐にわたります。専門家を招いたセミナーやeラーニング、社内啓発キャンペーンなど手法も様々です。厚労省の調査によれば、管理職や一般社員向けにメンタルヘルス研修を実施している企業は約49.9%にのぼり、さらに「今後教育を充実させたい」と考える企業は61.4%に達しています[11]。研修では単なる知識提供にとどめず、ケーススタディやワークショップ形式で自ら考え行動変容につなげる工夫をすると効果的です。
- 社内相談制度・産業保健体制の整備: 従業員が健康上の悩みを気軽に相談できる窓口や制度を整えます。具体例として、産業医や保健師による定期面談の実施、メンタルヘルス相談室やホットラインの設置、人事担当者によるフォロー面談などがあります。先の調査では従業員からの相談体制を整備している企業は70.0%と報告されています [10]。相談窓口の存在を周知し利用しやすい雰囲気づくりをすることが大切です。また、管理職に対して部下の健康相談を受け止め適切に対処するためのラインケア研修を行い、現場での一次対応力を高めることも有効です。
- 健康アプリ・ITツールの導入: スマートフォンアプリやオンラインプラットフォームを活用して、従業員の健康増進を支援する企業も増えています。歩数計や睡眠記録、ストレスチェック機能を備えたアプリを社員に提供し、自分の健康状態を“見える化”する取り組みはヘルスリテラシー向上に寄与します。アプリ上で信頼性の高い健康コラムや動画コンテンツを配信すれば、従業員はスキマ時間に楽しく学ぶことができます。たとえば、三菱地所や花王などは従業員向け健康アプリを導入し、生活習慣の改善や健康知識の定着を図っています。ITツールは若年層にも親和性が高く、ゲーミフィケーション要素を取り入れることで主体的な参加を促すことができます。
- EAP(従業員支援プログラム)の導入: 社外リソースであるEAPを活用するのも有効です。EAPとは、従業員とその家族が匿名・無料で利用できる相談サービスで、メンタルヘルスやハラスメント、法律問題や育児介護など幅広い悩みに専門家が対応します。外部のプロに直接相談できるためプライバシーが守られ、社内では言い出しにくい問題も打ち明けやすくなります。近年は中小企業向けにも手頃なEAPサービスが提供されており、経済産業省の「健康経営優良法人」の認定項目にもメンタルヘルス対策としてEAP導入が関連付けられています。EAP会社から定期レポートを受け取れば、組織の課題傾向を把握することも可能です。社内の人的リソースだけで対応が難しい場合は、積極的に専門サービスを活用しましょう。
- その他の支援策: 上記以外にも、社内報やメールマガジンで健康情報を定期配信する、社員の健康活動を促すインセンティブ制度(例:健康ポイント制度)を導入する、有給休暇とは別枠で病気休暇制度を設けて安心して休めるようにする、といった取り組みもヘルスリテラシー向上と健康管理の促進につながります。また、多様な働き方の推進(在宅勤務やフレックス制度等)により通院・休養しやすい環境を作ることも、従業員が自分の健康と仕事を両立する意識を持つ助けとなるでしょう。
従業員自身が取り組むべきこと
企業の施策と車の両輪となるのが、従業員一人ひとりの主体的な取り組み(セルフケア)です。ヘルスリテラシーは与えられるものではなく、自ら身につけ育てていく意識が欠かせません。従業員自身が以下のような行動を取ることで、日頃からヘルスリテラシーを高めることができます。
- 信頼できる情報源で学ぶ習慣: インターネット上には健康に関する玉石混交の情報があふれています。厚生労働省や医師会、専門学会、公的医療機関の発信する情報、科学的根拠に基づいた書籍や記事など、信頼性の高いソースから定期的に学ぶ習慣を持ちましょう。例えば「健康日本21」や「厚労省こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)」など公的サイトには有用な情報がまとめられています。SNSや口コミ情報も鵜呑みにせず、必ず裏付けを確認する姿勢が大切です。
- セルフモニタリングと記録: 自分の体調やメンタル状態を客観的に把握する習慣をつけましょう。毎日の睡眠時間や歩数、感じたストレス度、痛みの有無などを日記やアプリで記録すると、小さな変化や傾向に気づきやすくなります。体重や血圧、定期健診の数値なども把握しておくと、生活習慣の見直しにつながります。記録を振り返ることで「最近残業続きで疲労がたまっている」「肩こりが悪化している」等に早めに気づき、対処できます。
- セルフケア(休養・運動・栄養・相談)の実践: ヘルスリテラシーを高める最終目的は、適切な意思決定と行動に移すことです。日頃からストレスをため込まないよう適度に休息を取る、睡眠と栄養をしっかり確保する、運動やストレッチで体調を整えるといったセルフケアを意識しましょう。また不調の兆候を感じたら我慢しすぎず早めに対処することも重要です。身体の痛みが続くなら市販薬を試したり医師に相談する、気分の落ち込みが長引くなら産業医やEAPを利用するといった具合に、「おかしいな」と思った時点で行動を起こす習慣を身につけてください。これは決して弱音ではなく、自分の健康を守る賢明な判断です。
🔗 従業員のセルフケアについての詳しい内容はこちら - 会社の健康施策への主体的参加: 企業が提供する研修やセミナー、健康イベント、各種相談サービス等にはぜひ積極的に参加しましょう。せっかくの制度も利用しなければ宝の持ち腐れです。学んだ知識は職場の同僚や家族とも共有し、周囲にもセルフケアの輪を広げてください。互いに知識を交換したり運動を習慣化する仲間ができれば、楽しみながらヘルスリテラシーを高め合うことができます。
従業員自身のこうした取り組みは、最終的に自分の身を守るだけでなく職場全体に良い影響を及ぼします。「個人のセルフケア」→「組織の健康文化醸成」→「企業業績向上」という好循環を生み出すために、ぜひセルフケアの第一歩を踏み出してください。企業側も従業員の主体的な努力を後押しし、称賛する風土を作ることが大切です
健康増進支援SaaS「ポケットセラピスト」では、eラーニングコンテンツによるヘルスリテラシーの向上はもちろん、AI姿勢健診、オンラインフィットネスプログラム等によって無関心層にもヘルスケアに目を向けてもらうためのソリューションが用意されています。
また、高ストレス者や身体に痛みを抱える不調者に対しても、臨床経験のある医療専門職が改善支援からセルフケアの習慣化まで伴走支援するため、組織全体のヘルスリテラシーの向上と不調者へのフォローアップ施策を同時に行うことができます。

高い“ヘルスリテラシー”がもたらす効果とは?
ここでは、実際にヘルスリテラシー向上や健康施策の実施によって得られた効果を、データで確認します。信頼できる公的データや研究結果により、その取り組みが企業にとって投資に見合うリターンがあることが示されています。
- 健康経営による労働損失の削減(アブセンティーズム改善): アメリカの大規模企業で行われた包括的な職場健康促進プログラムの研究では、介入群のブルーカラー労働者において疾病による欠勤日数が2年間で14.0%減少し、未介入群の5.8%減少と比べて改善がみられました[11]。その差は2年間で累計11,726日もの欠勤削減に相当し、医療費・障害補償費の削減額はプログラム費用を初年度で相殺、2年目までに投資1ドル当たり2.05ドルの費用対効果(ROI)が得られたと報告されています[12]。この結果は、従業員の健康増進に向けた包括的施策が企業に経済的メリットをもたらすことを示す代表的な事例です。日本においても、健康経営度調査の分析から「従業員の健康投資を積極的に行う企業ほど業績や生産性が高い傾向」が報告されており、ヘルスリテラシー向上施策も含めた投資は十分見合うと言えるでしょう。
🔗 アブセンティーズムについての詳しい内容はこちら - 慢性疼痛対策によるパフォーマンス向上: 前述のデンマークの介入研究では、痛みの予防・管理に関する従業員教育と上司との対話による職場改善を行った結果、従業員全体の平均痛みスコアが7%低下し、特に痛みが中程度以上あったグループでは12%の痛み軽減が実現しました[12]。痛みによる仕事中断日数や病欠日数に有意差は出なかったものの、痛みそのものの軽減は従業員の集中力向上や業務継続性に寄与すると考えられます[9]。実際、「痛みが和らいだことで仕事に前向きになれた」「治療と業務の両立がしやすくなった」といった声が参加者から寄せられています(※同研究の付随報告より)。このように、ヘルスリテラシー向上を含む慢性疼痛対策は従業員のQOLと生産性双方の改善につながります。
- メンタルヘルス施策による効果: 定量的なデータとしては、公的機関の大規模調査で「メンタルヘルス対策に取り組む企業ほど病気休職者の発生率が低い」ことや「職場の活力指標(エンゲージメント)が高い」ことが示されています(厚労省『労働者健康状況調査』等)。また、ある製造業企業の事例では、ストレスチェック結果に基づく職場環境改善とラインケア強化により、翌年の高ストレス者割合が大幅に減少し、関連する休職者がゼロになったとの報告があります。個別の企業事例ではありますが、メンタルヘルス教育や相談体制の整備が労務コストの削減(病気欠勤の減少)や生産性指標の向上につながった例は数多く存在します。今後さらにエビデンスを蓄積することで、メンタルヘルス分野でのヘルスリテラシー向上施策の効果が定量的に示されていくでしょう。
- 女性の健康課題支援による効果: 先述の通り、ヘルスリテラシーの高い女性グループは低いグループに比べて1か月あたりの業務パフォーマンスが有意に高いことが明らかになっています[2]。さらにヘルスリテラシーが高い女性ほど、生理痛や更年期症状に適切に対処して仕事への影響を最小限に抑えられているという報告を踏まえると、企業にとって、女性社員のヘルスリテラシーを高め必要な支援を行うことで、生産性向上や優秀な人材の流出防止につながる可能性を示唆するデータです。また、経産省の試算した年間約4,911億円の労働損失[6]という試算についても、企業が女性の健康課題支援に取り組むことで取り戻せる潜在的メリットの大きさを物語っています。実際にあるIT企業では、女性従業員向けに婦人科検診の啓発や相談窓口を強化した結果、「生理休暇の取得率が上がり欠勤日数が減少した」「社内の理解が進み女性社員の仕事満足度が向上した」といった声が寄せられています。今後ますます各社の事例が蓄積されていくことでしょう。
🔗 女性の健康課題についての詳しい内容はこちら
以上のようなデータや事例から、ヘルスリテラシー向上施策は従業員の健康保持・増進のみならず、企業の生産性向上やコスト削減という明確な効果をもたらすことが裏付けられています。施策導入当初は効果が見えにくい場合もありますが、中長期的に見れば人材への投資が企業業績に跳ね返ってくることは多くの研究が示すところです[11]。大切なのは、自社の課題に合った施策を選び、継続的に改善を図りながら定着させることです。PDCAを回しつつデータを計測・検証し、自社にとって最も効果的なアプローチを模索しましょう。
まとめ
従業員のヘルスリテラシー向上は、企業と従業員双方に大きなメリットをもたらすウィンウィンの取り組みです。企業にとっては、従業員が自身の健康を適切に管理できるようになることで、メンタルヘルス不調や生活習慣病の予防につながり、結果的に病気離脱者の減少や医療費の削減、生産性の向上が期待できます。プレゼンティーイズムやアブセンティーイズムの改善は職場全体の活力アップにつながり、優秀な人材の定着率向上や企業イメージの向上といった副次的効果も得られるでしょう。従業員にとっても、正しい健康知識を身につけ主体的にセルフケアを実践できるようになることで、心身の健康維持とキャリアの両立が可能になります。自分や家族の健康に対する不安が減り、仕事に専念できる時間が増えることは、生活の質の向上にも直結します。
重要なのは、ヘルスリテラシー向上は一朝一夕で達成されるものではなく、継続的な取り組みが求められる点です。企業側は経営層のコミットメントのもと、計画的に施策を導入・検証し、従業員の声をフィードバックしながら改善を図ってください。従業員側も受け身ではなく、自ら学び行動する姿勢を持ちましょう。そうすることで、職場全体に「自分たちの健康は自分たちで守り、高めていく」という前向きな文化が醸成されていきます。健康経営の最終目的は、従業員が心身ともにいきいきと働ける職場を実現することです。
そのための土台として、まずは社内のヘルスリテラシー向上に取り組んでみませんか?
今日から始められる小さな一歩(例えば、健康情報を共有する場を設ける、スタッフの研修を計画する、自分自身で信頼できる健康記事を一つ読む等)を踏み出し、将来の大きな成果につなげていきましょう。本記事の内容をヒントに、是非自社の実情に合ったアクションを起こしていただければ幸いです。組織と従業員の健やかな未来のために、共にヘルスリテラシー向上に取り組んでいきましょう。
引用・注釈
[1] 厚生労働省 eJIM _ 医療者と患者のコミュニケーション「ヘルスリテラシーを手がかりにして」
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/communication/c01/01.html
[2] 日本医療政策機構「働く女性の健康増進調査2018」
https://hgpi.org/wp-content/uploads/fdcc937b95261216437d2c6201164376.pdf
[3] 厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r05-46-50_gaikyo.pdf
[4] 厚生労働省「令和6年版過労死等防止対策白書」https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000845811.pdf
[5]矢吹省司 他.「日本における慢性疼痛保有者の実態調査―Pain in Japan 2010」
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2011/113041/201118053A/201118053A0031.pdf
[6]経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/josei-kenkou.pdf
厚生労働省『コラボヘルスガイドライン』(2017年)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000171483.pdf
[8] 世界保健機構(WHO)「職場のメンタルヘルス対策ガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001258077.pdf
[9] Anne Konring Larsen, et al. The effect of strengthening health literacy in nursing homes on employee pain and consequences of pain ‒ a stepped-wedge intervention trial. Scand J Work Environ Health . 2019 Jul 1;45(4):386-395. PMID:30677126
[10]厚生労働省「メンタルヘルス対策実態調査結果について」
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/library/osaka-roudoukyoku/H23/press/2011_11/231104-kenko.pdf
[11]Bertera RL. “The effects of workplace health promotion on absenteeism and employment costs...” Am J Public Health. PMID:2382748
[12]独立行政法人経済産業研究所「企業における従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績-企業パネルデータを用いた検証-」
https://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/14j021.html



-300x147.jpg)
