ワーク・エンゲージメントとは?測定方法(UWES)から向上施策を高めるポイントを解説
従業員が活き活きと働いている状態を示す「ワーク・エンゲージメント」。厚生労働省の労働経済白書でも取り上げられ、健康経営の成果指標としても注目が高まっています。しかし「具体的にどう測定し、何から始めればいいのか」と悩む人事担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、ワーク・エンゲージメントの定義から測定方法、向上施策までを分かりやすく解説します。
目次
ワーク・エンゲージメントとは?定義と3つの構成要素
ワーク・エンゲージメントとは、仕事に対して「活力(Vigor)」「熱意(Dedication)」「没頭(Absorption)」の3つが満たされている状態を指します[1]。オランダ・ユトレヒト大学のSchaufeli教授らが提唱した概念で、単なるモチベーションとは異なり、持続的かつ全般的な心理状態として定義されています。

似た概念との違いも押さえておきましょう。バーンアウト(燃え尽き症候群)はワーク・エンゲージメントの対極にある状態で、疲弊感や仕事への無関心が特徴です。一方、ワーカホリズム(仕事中毒)は「働かずにいられない」という強迫的な動機に駆られている点で、自発的な充実感を伴うワーク・エンゲージメントとは本質的に異なります。
ワーク・エンゲージメントが個人・組織に与える影響
生産性への影響
厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」によると、ワーク・エンゲージメントのスコアが高い従業員ほど1時間あたりの労働生産性が高く、スコア2以下の従業員が3,390円/時であるのに対し、スコア6の従業員は4,360円/時と約1.3倍の差があります[1]。
エンゲージメントの高低が、そのまま組織全体のアウトプットに直結することを示す結果です。
人材定着への影響
同調査では、エンゲージメントの高い従業員ほど離職意向が低く、「今の会社で働き続けたい」と回答する割合が高いことも報告されています[1]。
採用難と人材流出が経営課題となるなか、ワーク・エンゲージメントは定着率を測る先行指標としても注目されています。
メンタルヘルス不調リスク
ワーク・エンゲージメントが低い状態は、バーンアウト(燃え尽き症候群)への入り口ともいえます。疲労感や仕事への無関心が慢性化すると、抑うつ・不安などのメンタル不調へと進展するリスクが高まります[1]。「頑張っているのにやりがいを感じられない」状態は、見逃せない早期のサインです。
⚠️ 低いワーク・エンゲージメントが引き起こす"腰痛リスク"

身体面への影響も見逃せません。日本の病院職員699名を対象とした研究では、ワーク・エンゲージメントが高い群の腰痛有病率は37.1%にとどまった一方、低い群では51.7〜62.4%と大きな開きがありました[2]。とくに**「ワーカホリズムが高く、ワーク・エンゲージメントが低い」群は、腰痛の調整済みオッズ比が2.33(95%CI: 1.32–4.09)と最もリスクが高い**結果でした[2]。
肩こり・腰痛・不眠といった身体愁訴はメンタル不調の初期サインである場合も多く、心と体の両面からコンディションを把握することが早期対応の鍵となります。
ワーク・エンゲージメントの測定方法
一般的に広く使われているUWESと、ストレスチェックを活用した測定について簡単に紹介します。
代表的な尺度:UWES(ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度)
UWES(ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度)は国際標準の尺度で、日本語版は島津明人教授(東京大学)が翻訳し、無料で利用可能です。『ポケットセラピスト』でも活用しています。
『活力』『熱意』『没頭』を尋ねており、フルバージョンは17項目、ショートバージョンで9項目あり、研究では9項目が使われていることが多いです。設問に対して0から6で選び、合計点を出す方法です。
代表的な尺度としては「MBI-GS」「OLBI」もあります。これらは、UWESとは反対に「仕事への無関心さ・バーンアウト度合い」を測ることにより、エンゲージメントの低さを測定する尺度です。
無料で日本語版も利用できるUWESによる測定をお勧めしますが、自社の状況や測定の目的を考慮して選択してください。
ストレスチェックの中で測定する方法
ワーク・エンゲージメントは、新職業性ストレス簡易調査票の設問から測定することもできます。新職業性ストレス簡易調査票は、厚生労働省のストレスチェック制度で広く使われている調査票の拡張版です。従来の57項目に加えて、ワーク・エンゲージメントに関する設問が含まれる80問からなります。
既存のストレスチェックの中で測定できて追加コストが抑えられるので、まず簡易的に測定したい場合は80項目版への切り替えを検討すると良いでしょう。
他にも、ストレスチェックにワーク・エンゲージメントについての追加設問を加える方法もあります。現在行っているストレスチェックの方法の中で、追加設問に対応できるか確認してみて下さい。
ワーク・エンゲージメントを高める3つのポイント
ワーク・エンゲージメント測定後、結果が低い集団・個人に対してどのような施策を講ずる必要があるかをご紹介します。
ジョブ・クラフティングの導入
ジョブ・クラフティングとは、従業員が自ら仕事のやり方・人間関係・仕事の意味づけを工夫し、主体的にやりがいを生み出す手法です。
厚生労働科学研究の介入研究では、ジョブ・クラフティング研修の前後でワーク・エンゲージメントの向上と心理的ストレス反応の低減が確認されています[5]。
POS(知覚された組織的支援)の醸成
POS(Perceived Organizational Support)とは、従業員が「組織から大切にされている」「自分の貢献が認められている」と感じる度合いを指します。POSが高い従業員ほどワーク・エンゲージメントや組織へのコミットメントが高く、離職意向が低いことが多くの研究で報告されています。管理職によるラインケアの強化、定期的な1on1と建設的なフィードバック、成果に対する承認の仕組みづくりなどが、POSを高める代表的な施策です。心理的安全性の確保も、このPOS醸成の土台となります。
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心身両面からのコンディショニング
ワーク・エンゲージメントはメンタル面の指標ですが、メンタルヘルスの不調は腰痛や肩こりなどの身体愁訴とも強く関連することから[2]、包括的に従業員の健康をサポートできることが望ましいです。
ワーク・エンゲージメントサーベイやストレスチェックによる心理面の把握に、身体面の健康データも組み合わせてコンディションを把握することで、不調の早期発見が可能になり、組織全体のワーク・エンゲージメント向上にも繋がります。
自社で取り組むための3ステップ

Step 1:現状を測定する まずはUWESまたはストレスチェックの拡張版を活用して、組織全体のワーク・エンゲージメントを定量的に把握します。部署・年代・職種別に分析すると、改善の優先順位が見えてきます。
Step 2:課題を特定し施策を設計する スコアが低い層の共通要因(業務負荷・裁量度・上司との関係性など)を分析し、前述の3つの観点から、効果が見込める施策を検討します。
Step 3:効果測定とPDCAで定着させる 施策実施後、3~6カ月後に再測定を行い、スコアの変化を検証します。健康経営度調査への回答にも活用でき、取り組みの可視化と継続的改善につながります。
まとめ
ワーク・エンゲージメントは、生産性・離職率・メンタルヘルス、さらには腰痛などの身体症状にまで影響する、健康経営の重要な先行指標です。まずは測定から始め、データに基づいた施策設計と効果検証のサイクルを回すことが、持続的な組織の活力向上につながります。
引用
[1] 厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 —人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について—」 https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/19/19-1.html
[2] Nihei K, et al. "Association Between Low Back Pain, Workaholism, and Work Engagement in Japanese Hospital Workers: A Quantitative Cross-sectional Study." Journal of Occupational and Environmental Medicine, 2022; 64(12): 994-1000. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9722383/
[3] 島津明人研究室「ワーク・エンゲイジメント(UWES)」 https://hp3.jp/tool/uwes
[4] 経済産業省「健康経営ガイドブック2025」 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html
[5] 島津明人 他「労働生産性の向上に寄与する健康増進手法の開発に関する研究」平成30年度厚生労働科学研究費補助金 https://hp3.jp/wp-content/uploads/2019/09/14.pdf




