ダスキンの健康経営の成否を握る”トップコミットメント”と”コラボヘルス”

ダスキン健康保険組合
組合名
ダスキン健康保険組合
事業内容
株式会社ダスキンを母体に関連企業26事業所の健康保険事業への取り組み、保険給付、健康増進の啓蒙活動
設立
株式会社ダスキン1963年2月4日、ダスキン健康保険組合1974年4月
資本金
株式会社ダスキン113億円(2020年3月31日現在)
売上高(連結)
株式会社ダスキン1,591億円 (2020年3月期)
従業員数(連結)
株式会社ダスキン3,802名(2020年3月末)
事業所
株式会社ダスキン 本社(大阪府吹田市)、地域本部(北海道、東北、東京、北関東、南関東、東海・北陸、近畿、中国・四国、九州)、ダスキン健康保険組合加入事業所26カ所(2020年4月1日)
URL
https://www.duskin-kenpo.or.jp/ | https://www.duskin.co.jp/

お話を伺った方

この度、株式会社ダスキンの関係会社であるサーヴ北海道の久米様(代表取締役社長)とダスキン健康保険組合(以下、ダスキン健保)の石井様(常務理事)にお話を伺いました。ファシリテーションは弊社代表の福谷が実施しております。

ダスキン健保様には、肩こり・腰痛などによる労働生産性低下・メンタルヘルス対策、前期高齢者の健康維持(ロコモティブシンドロームやフレイル予防)を目的に、2019年よりポケットセラピストを導入いただいております(参考:過去のインタビュー記事

ダスキン健保様とは、ポケットセラピストを社内に浸透する様々な取組みを一緒にしてきました。その中で、久米様にも出会い、今回のテーマでもある”トップコミットメント”や”コラボヘルス”がいかに健康経営の成功に重要かを肌身で感じました。

そこで今回対談インタビューを行い、これから健康経営を推進されようとする企業様や健保様にとって、ヒントや参考となる内容を伺いましたので、ぜひご一読ください。

そこで今回対談インタビューを行い、これから健康経営を推進されようとする企業様や健保様にとって、ヒントや参考となる内容を伺いましたので、ぜひご一読ください。


左上:サーヴ北海道 久米様、右上:バックテック 坪井
左下:バックテック 福谷、右下:ダスキン健康保険組合 石井様

事業主側のスピード感や現場との距離感をいかに活かすか

福谷:健保の立場として事業主と連携する意義についてどのようにお考えでしょうか。また、コラボヘルスを進める中での難しさも伺えると嬉しいです。

石井様:そもそも健保は「利益をあげて頑張るぞ〜!」という組織ではありません。健保に所属する組合員さん、ご家族の方が私達のお客さまにあたり、保険料をいただいています。健保としては、組合員さんと一緒に健康に取り組んでいく必要がありますが、ダスキン健保の場合だと、被扶養者を含めて約1万人の、一人ひとりとコミュニケーションを取るのは難しいです。その中で、事業主さんは要となる、とても重要な存在です。

当健保では、グループ会社が多く、その組織は小さいですが、何かをお願いした時に、社長→管理部長→社員という具合に情報がスーッと流れていきやすい環境です。そういうスピード感や現場との近い距離感からも、グループ会社との関係はすごく大切にしたいと思っています。

健康経営も本社だけが頑張っていてはダメで、一つひとつの店舗や職場の働きさん(ダスキンでの社員の呼称)が活き活きと働けないと、全体の生産性、売上にも影響してしまいます。

福谷:ちなみにグループ会社さんと集まる場などは定例などであるのでしょうか。

石井様:コロナ以前は、年に2回くらい会議に参加したりしていました。ただコロナ以降は、なかなかできていないのが現状です。年に一回、各社ごとの健康白書を作成しているので、その報告をする場だけでも、今年からまた設けていきたいと思っています。

支店長会議で「健康」を議題に上げる

福谷:それでは久米社長にもお伺いしたいと思います。経営者という視点で、自社だけで健康施策をする時と、健保さんと一緒にコラボでやる時の違いはありますか。

久米様:我々の仕事はサービス業なので、人が資本です。経営的な視点でいうと、人件費のウェイトが大きいです。となると、過度な人員配置はできず、限られた人数の中で、いかに生産性をあげるかが重要です。そのため、一人の働きさんにかかる負荷が高いです。その中で、体調を崩して長期休職などに到ってしまうと、経営的にもダメージがあります。

これは経営的者視点だとそう思えるのですが、働きさん自身にも、自分は会社の経営上、大切な人材で、健康が第一だという意識をもってもらうことが重要です。そのためには、会社の経営上も働きさんの健康が重要だと、働きさん自身が気づける場、機会を設けていかないといけません。

ただ、そういう場を会社だけで独自に設けるというのは、正直なかなか難しいです。その中で、健康保険組合さんが、色々な健康情報を送っていただき、事業を企画してくれるのは、大変有り難いと思っています。その中には、健診結果や健康イベントの参加率に関する会社別の順位の公表などもあります。

福谷:健保から会社別の順位が出てきた時はどのように感じますか?

久米様:やはり順位が低いというのは、気持ち良いものでありません。弊社で誇れるものとして、他のグループ会社と比べて順位が高いのが健康管理アプリの登録率で98%です。一つでも良いものがあると、気持ちは良いものです。

昨日もちょうど支店長会議があったので、うちの健康に関する現状や課題を支店長と共有しました。これは現場に一番近い、支店長から伝わるのが重要という考えからです。やはり、現場に近い支店長が、より意識を高めていただかないと、なかなか現場に落ちるものも落ちていきません。

福谷:支店長会議の場で健康を議題に上げているのは、素晴らしいですね。

石井様:それは本当に素晴らしいですよね。健康経営は、国が主導で進めていて、やらされ感がある方も若干ある中で、会社の社長のトップコミットメントがあるのは本当に有り難いです。社長が「社員の健康は大事だ」と伝え続けても、今日言って明日変わるようなものではないと思います。でも昨日支店長会議に出ていた人が70歳になった時に「あ〜そう言えば久米社長が、あんなこと言ってたな〜」と後々感じることがあるかもしれません。

福谷:そうですよね。最近の健康経営に関する調査でも、経営幹部層がミーティングなどで健康の話をしているかどうかがアプリの登録率にすごく影響を与えることがデータで分かってきています。いかに普段のコミュニケーションの場で、健康の話が出るかが重要で、理想的だなと感じました。

石井様:余談ですが、サーヴ北海道さんの健康経営度調査のレポートは非常に綺麗にまとまっています。会社のことをきちんと分かって、申請されているのだなと感じています。

先ほども話にありましたが、サーヴ北海道さんの健康アプリ登録率やウォーキングキャンペーン参加率はトップクラスです。みんなで参加するというのは、サーヴ北海道さんの強みですね。

久米様:それくらいしか誇れるものはありません(笑)

石井様:カラダを動かすのは健康の基本なので、素晴らしいです。

福谷:久米社長のリーダーシップですね。「やるぞ!」みたいな。

久米様:いえいえ、実は以前の管理部長だった吉川さんという方が、健康施策への意識が非常に高く、その方に背中を押されたことも大きかったというのが正直な所です。

福谷:社内で健康経営を引っ張られていた吉川さんの存在が大きかったんですね。コラボヘルスという観点で、事業主だけ、健保だけではできないことを補いながら、両輪が上手く回っていて、理想的な印象を受けました。

社長自ら先陣をきるトップコミットメントをポケットセラピストで体現

福谷:今回、久米社長自らもポケットセラピストを実際にご活用いただきましたが、その話を伺っていきたいと思います。まずはポケットセラピストをご利用いただく以前の状況をお聞かせいただけますか。

久米様:元々ランニングやウェイトトレーニングは好きでした。ただ、意識しないと運動をサボってしまうというのを繰り返していました。また、今の仕事柄パソコンを使うことが多く、現場にもなかなか出なくなったので、肩こりや五十肩などの症状を何度も繰り返し、それがストレスになっていました。

福谷:肩こりなどでお困りだったとのことで、マッサージや整骨院に行くなどはされていましたか。

久米様:はい。五十肩になってから整骨院に月1~2回はずっと通っていました。ただ、ポケットセラピストを使ってからは、整骨院に一度も行かなくなりました。なので、医療費削減に少しは貢献できたと思います(笑)

福谷:それは素晴らしいですね!そこからポケットセラピストを使うに至った経緯も教えてください。

久米様:それこそ弊社でポケットセラピストを広める目的で、バックテックの坪井さんに支店長会議の場でポケットセラピストの紹介をしていただきました。その時、先ほども話にあがった吉川さんに「久米さんやったら良いのに!」と後押しされ、始めました。

また、健康経営に対するトップコミットメントの意識も始めた理由の一つです。これまでも、伝えてはいるが、伝わらないという場面を多く体験してきました。その時に感じたのが、やっぱり伝える側の言葉に真実味があるかが重要だということです。実際に体験した人の言葉って強いですから、自分が体験して伝えることで、一人でも同じような体験をでえきる人が増えたらと思い「じゃあやってみるか!」と思い切って一歩踏み出しました。最初はできるかな〜という不安もありました。

ポケットセラピストで、セルフケアをついサボってしまう自分の弱さを補完できた

福谷:オンラインで肩こり・腰痛対策と聞いた時に違和感はありませんでしたか。

久米様:当然やったことがなかったのでイメージが湧かない部分はありました。ただ、YouTubeやネットで肩こりのマッサージ動画を見たり、股関節もすごく硬いので柔らかくする動画を見ていたので、こんな感じなのかな〜とはイメージしていました。

福谷:ビデオ通話で医療職と話すことについて不安はありましたか。まだまだ、ビデオ通話で医療職に相談をする体験をしたことがある人は世の中的にも少なく、一歩踏み出しにくいという声を聞くこともあります。

久米様:コロナの影響でWEB会議が増えた関係もあり、私自身はビデオで話すことに違和感はありませんでした。ただ、普段そのような体験をしていない人は、不安になったり、恥ずかしいなどの気持ちがでるかもしれませんね。

福谷:確かに慣れてない方はそうかもしれませんね。我々としては、あまり身構えず気軽にご利用いただきたいと思っています。最初は不安でも「やってみたらすごく良かった」「親身に話を聞いてくれて安心できた」などの声が非常に多いです。

久米様:確かにそうですね。特に私の場合だと、相澤先生という方がついてくれたのですが、互いに北海道在住ということで、親近感があったのも良かったです。

ある種の信頼関係もできてきて、オリジナルで組んでもらったミッションも、自分のペースで好きなタイミングで実践をしていました。とは言え、毎日エクササイズの通知がくるようにしていたので「やらなきゃ〜」という適度なプレッシャーも良かったです。

ポケットセラピストは、先生がついて指導してくれるので、ついサボってしまう自分にとっては、見張り番のような方がいて良かったです。先生が寄り添ってくれて、一人じゃないので、コミュニケーションを取りながら続けられました。セルフケアをついサボってしまう自分の弱さを補完でき、背中を押された感覚がありました。

また、コメント機能をすごく活用しました。運動を実施したら、毎回コメントを書いて、相澤先生に報告するように決めて、ある種の良いプレッシャーを自分に課しました。ただ、コメントも非常に簡単なもので「今日は朝からやった!」「今日は2連チャンでやった!」などです。それに対して相澤先生も返してくれるので嬉しかったです。

3ヶ月があっという間に過ぎて、しっかりやりきった自分に自信もつきましたね。

福谷:ちなみにポケットセラピストの体験の中で一番よかったものを一つに絞るなら、どんなことが一番良かったでしょうか。

久米様:一つに絞るのはなかなか難しいですね。ただ、あえて一つに絞るなら、自分の中ではコメントで日々コミュニケーションを取るのがハマっていたと思います。それがあったから、自分を律して運動も続けられたと思います。ただ、信頼関係を築く上では、ビデオ通話で定期的に話せたことが大きかったです。なので、私にとってはコメントとビデオ通話が組み合わさって一つのパッケージとして重要だと思っています。

福谷:今後ポケットセラピストを勧めるとしたら、どんな働きさんにお勧めしたいですか。

久米様:まずは、何らかの症状がある人には積極的に使って欲しいですね。また、私もそうですが、サービス業はお客様の時間に左右される分、自分の時間が取りにくいので、決まった時間にふっとネスジムや整骨院になかなか行けない人が多いです。なので、なかなか時間が取れない、余裕がなくてフィットネスジムや整骨院にも行けない人にも、ぜひお勧めしたいです。

石井様:「あなただけの時間に、あなただけのセラピスト」とかがキャッチフレーズに良いかもですね(笑)

ダスキン健保とサーヴ北海道が目指すこれからの健康経営

福谷:久米社長からは経営者として、石井様から健保の視点で、今後の健康経営や保健事業、コラボヘルスの展望をお聞かせください。

石井様:健康保険組合としては、やはり組合員さんが健康であって欲しいです。そのために、事業主さんと一緒になって、組合員さんの健康に役立つことをしていきたいです。また、働きさんが健康でなかったら、会社にとっても良くないということも伝えていきたいです。

そして、今回の対談インタビューで一緒にお話する機会をいただけたことは、健保としても有り難いですし、今後もこのような話をする機会は続けていきたいと思いました。

久米社長も言われたように、現場でお仕事されている方は、なかなか病院にはいけないので、もっとオンラインを使いやすいようにしていきたいと思います。

久米様:やはり、働きさんの健康は会社の成長になくてはならない要素だと思っています。世の中全体がそうだが、働く世代の年齢層がどんどん高くなってきています。その流れも加速していて、弊社でも本格的に定年延長の話が進んでいます。

仕事はけして楽ではないし、ただ楽しいというのも少し違うとは思いますが、定年を追えるタイミングまで、できる限り健康で明るく、活き活きと働いていただきたいと思っています。

それが結果的に、周りの人や会社、社会全体にいい影響を及ぼすと思っています。今の世の中や会社の状況、企業の成長を考えると、社員の健康への意識は高めざるを得ないとも思います。それほど大切な課題でもあるので、私のような経営者と同じ目線とまではいかなくとも、少なくとも自分の健康は大切にして欲しいなと思います。

福谷:お二人とも、本日はありがとうございました。

まず「会社が成長する上で社員の健康が重要だ」という認識を、健保・経営層・管理職・社員全員が共通理解することの重要性を学びました。

そして、そのためには経営層や管理職などのトップが、自ら旗振り役、そして、真実味をもった健康行動の実践者として、健康経営を推進していく必要があるということでした。

振り返ってみると、確かに他社様でも、健康経営が社員にしっかり浸透しているなと感じるところでは、このような条件が揃っていました。

私自身も会社を経営する一人として、非常に多くの学びを得ることができました。これにてインタビューを終了したいと思います。

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